瀬戸内海の有人島で、淡路島を除けば最大の島、小豆島。
この巨大なオリーブと醤油で有名な島も、
前回に引き続き瀬戸内国際芸術祭の舞台となっています。
高松港よりフェリーで約1時間、穏やかな瀬戸内海を島と島の間をすり抜け、船は小豆島最大の町である土庄の港に着岸します。
そこでまず僕たちを出迎えてくれるのが韓国人アーティスト崔正化(チェ・ジョンファ)の作った巨大なオリーブのオブジェ、題して「太陽の贈り物」、記念写真を撮る人が沢山。
ここから島内を巡る訳だけど、小豆島はハッキリいって巨大、徒歩での移動はほぼ不可能と思っていい。自然にバスかレンタカーでの移動に。気合があれば自転車でも可能?坂道多けど・・・今回僕らは車をフェリーに乗せてきたので、かなり快適に島を巡れました。そこでせっかくなのであまり知られてないような島の巨樹や、アート作品の夜の顔などもご紹介できればと。
早速土庄の街のすぐそばにある有名な巨樹をご紹介。これ森のように見えますが、なんと一本の木。樹齢1500年と言われる宝生院のシンパクです。(シンパクとはビャクシン、イブキと同じものでヒノキ科の常緑高木)
生命力を象徴するかのように曲がりくねった木の幹が大迫力。シンパクとしては日本最大で、古墳時代から生きていると言うのだから声も出ない。長年島の人に大切にされてきたのでしょうね。
そのまま有名な農村歌舞伎舞台がある中山千枚田のほうへ進むと、これまた有機的で巨大な造形物が見えてきます。まるでムーミン谷の怪物のよう。
中に入るとそのままの形で広大なドーム空間になっており、何時間でもそこにいれるような場所。みな寝転んだり思い思いの時間を過ごしてる感じ。展示期間が終わったら解体されてしまうようだけど、出来るならずっと残して欲しいなと思わせる素敵な空間。
そしてここにも巨樹が。八日目の蝉の映画ロケ地にも使われた千枚田をあがっていくと、これまた巨大な樹影が見えてきます。ここは名水100選にも選ばれている島の水源湯舟山の境内。こんこんと沸く泉を支えるのは巨樹の森なんです。
この巨大な樹の一本は実は死んでいます。中は空洞になっていてお地蔵さんが安置されてる・・・いわゆる立ち枯れというやつですが、死してなおこれだけの存在感で堂々と立っている樹を見てると、なんとも言えない気持ちになります。一体どれだけの島のドラマを見てきたのだろう。
中山の千枚田では、長らく途絶えていた虫送りという儀式を、映画のロケを契機に2年前から復活させました。この広大な段々畑を松明を持った行列が練り歩く姿は壮観。害虫を追い払い豊作を願う伝統行事は、7月頭に行われるそうで、来年は是非見に行きたいなあと。
そして一気に島の反対側の草壁・坂手エリアへ。ここはひしおの国、町全体が醤油の匂いに包まれます。昔の醤油取引所の中を改装した作品は、コミュニティ・デザインで有名な山崎亮らによるもの。中に入ると夕日のような暖かい光のグラデーションが。
近寄ってよく見ると、これらが全て濃度を変えた醤油ボトルを並べたもの!製作者たちの熱意に脱帽。廃棄醤油を使って、アーティストに負けない作品を作ろうと、皆で一丸となって作業したそう。ここまでされると否が応にも、島の醤油への興味を掻き立てられる。
作品名「おおきな局面のある小屋」そう、公衆トイレです。今回各島に公衆トイレの形態をとったアート作品が多数製作されており、島内を巡る観光客も安心して利用できる場所に。しかしオシャレ過ぎ。
大阪のクリエイティブ集団glafによる「小豆島カタチラボ」には、島に関する様々なものが調査、分類されて編集して展示されてました。自然を整理することで見えてくる未来のデザインの形。
坂手の港から坂道を登ると、今回の芸術祭参加アーティストの中でも抜群の知名度を誇るであろうビートたけしがヤノベケンジと合作した作品。巨大な怪物が井戸の中から表れ、大量の水を吐き出す!まるでテーマパークの如し。難しいことは何も考えなくても子連れで楽しめそう。
港近くには巨大なミラーボールにドラゴンが乗っかったオブジェが・・・これは夜になると凄そう、アブナイ匂いがしますね。タイトルもズバリ「スター・アンガー」
そのすぐ横にはそれらのオブジェを配した巨大絵巻物が!この作品は芸術大学を卒業した女性が、ほぼ一人で一ヶ月ほどかけて書き上げた入魂の大作。各作品は期間が終われば無くなりますが、この壁画だけは残されるそう。伝説の生き証人になるのかも。
そして夜、坂手の港に来てみると一変した風景に圧倒されました。夏は暗くなるのも遅いし、場所も場所なのでかなりハードルが高いけど、これは出来たら生で見て欲しい!大きな光と小さな光が複雑な動きを地面に描き出していて、いつまで見ても飽きない。島の港が一気に非現実空間に。
その時巨大な船が港に入ってきました。高松と小豆島を神戸の三ノ宮と繋ぐジャンボフェリー。この船は高速道路1000円時代は廃止も危ぶまれたのですが、今では船内にヤノベケンジの作品が展示されたりと芸術祭と関西を結ぶ貴重な船として大活躍!僕もしょっちゅうお世話になってます。
今しか見れない「スター・アンガー」とジャンボフェリーのコラボ!光が船体にも映り込んでメチャクチャ綺麗。ヤノベケンジはこの船をノアの箱舟、小豆島をノアが発見した新天地と見立てて作品を制作したそう。
ゆっくりと新天地を旅立つ箱舟。そう、これだけ駆け足で回っただけでも、いかにこの島が恵まれた豊かな島かが分かります。アートという呼び水が産業による雇用と結びつき、関西からの若者の移住も加速しているそう。地の利もいい新天地は、これからも発展していくのでしょう。船のスピードは思ったより速く、あっという間に暗闇に消えていきました。その姿はまるで別な惑星に降り立った、宇宙船のようでもありました。
瀬戸内国際芸術祭2013 アートと島を巡る瀬戸内海の四季
http://setouchi-artfest.jp/
夏|7月20日[土]—9月1日[日]44日間
秋|10月5日[土]—11月4日[月・休]31日間
[開催地]瀬戸内海の12の島+高松・宇野
直島/豊島/女木島/男木島/小豆島/大島/犬島/沙弥島[春のみ]/本島[秋のみ]/高見島[秋のみ]/粟島[秋のみ]/ 伊吹島[夏のみ]/高松港・宇野港周辺