彼の名はトビハゼ。Mudskipper.
河口の干潟にすんでいる。鰓呼吸も皮膚呼吸もできるので水陸両用。泥の上を跳ねまわって餌をとり、敵がきたら泥の中に隠れ、巣穴を掘って産卵もする。一生を干潟に依存している。
干潟は変化のかたまりだ。潮の干満によって、陸上になったり水中になったり。塩分濃度も水温もあがったりさがったり。過酷な場所である。でもだからこそ多種類の生き物がすんでいる。
干潟をつくっている土砂は、もとをたどれば山の土。山の斜面崩壊や土壌浸食にはじまり、川の河床となって河口に運ばれたものだ。植生の変化や堰堤や砂利採取などによって土砂の流れ(流砂系)が変化し、河口への土砂供給量が減少している。そこに沿岸構造物による影響が加わって、最近は干潟そのものが縮小している。ここ四万十川流域でも同様だ。大きな川だけれど、山のあいだを蛇行して流れる礫河川であり、もともと干潟面積は小さい。干潟になるのは、河口域左岸側から合流してくる竹島川下流部か,四万十川右岸側にある大島付近の狭い範囲のみ。干潟の存続は不安定な状態といえる。
彼は 高知県では「ぴょんぴょんはぜ」とよばれている。なんともかわいらしく、その行動をよくあらわす呼び名である。ところが、上記のような状況を反映したのか、2002年発行の高知県レッドデータブックでは絶滅危惧II類として指定されてしまった。現在では「高知県希少野生動植物保護条例」に基いて、捕獲の禁止など保護対象となっている。
さてさて。
少しとびだした眼をもつ彼は その独特のまなざしで 何をみているのだろうか。