高知県仁淀川町の最深部。清流仁淀川に添って走る国道33号を、北にはいる。
霧に包まれたロング・アンド・ワインディング・ロードをゆっくりと走らせること、20分。
80代ばかり数人が暮らす集落に出た。
どの家も雨戸が閉じられ、生活道具は家の周囲にない。雑草は生い茂り、家を包む。
家々を横目に、歩くにも険しい急坂を登り切ると、広場に出る。
車を停め、すぐ近くの古民家に近寄っていくと、斜面には手の行き届いた茶畑があった。
茶畑の上には、築100年はたっていそうな古民家がある。
手前の小屋は、屋根は落ち、壁は崩れ、朽ち果てるのをまっているかのようだ。
家が、死んでいた。
ここからさらに、歩くのが精一杯の山道を50メートルほど、息を切らしながら、登る。
雑草の刈り取られた一角に、最近まで人が暮らしていた古民家がある。
ここも築100年以上は経っていそうな佇まいをしている。
家の中に入ると、まだ生活感は残る。
部屋の奥。襖を開けると、そこには、神棚。秋葉祭りで有名な秋葉神社の御札もある。
ここの住民が、地域の神様を大切に崇めてきたことが、このひと部屋からよく伝わってくる。
神様に守られた家には、空気の流れがあり、呼吸をしているような気がした。
まだ、家は生きていた。
僕たちの暮らす家はまだ、見つかっていない。