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スキーランドは釣り堀だった!神山スキーランド

《高知》高知城下町、その痕跡を征く

2017.7.11 

最終楽園・沖の島

ura960

狭い四国といえども実際はその姿は広く、まだまだ行ってない場所、会えてない人がたくさんいる。
その中でもかねてより渡航を熱望しながらも叶わなかった島に今回やっと行く事が出来た。
高知県最南西、黒潮のただ中に忽然と浮かぶ沖の島だ。

ここは宿毛からの船が一日2便しか無く、その1便目が7時という早朝に出るため高松から非常に行きにくい渡航難易度の高い島だった。今回愛南で一泊することが可能だったため朝の便になんとか乗り込むことが出来た。おそらく東京から行こうとしたら海外よりも時間がかかるはずだ。

切符売り場

フェリーも瀬戸内海とは違い、いかにも外洋の船といった形。

天気は生憎の雨だがこの機会を逃す訳にはいかない。昭和感漂う船着き場からいざ出港。平日なのもあってかお客さんは3人程度で大人は片道1330円。完全に赤字航路である。

沖の島までは1時間弱の船旅。愛南出発とはいえ5:30起床だったため睡魔に勝てずしばしの仮眠。
外洋だが今日は並は穏やか。雨の海を静かに船は進んだ。

一瞬で眠りに落ちたと思ったらアナウンスで目が覚めた。すぐさま窓の外を見ると大岸壁に小さな鳥居が見える。第一印象は八丈島みたいだなと感じた。瀬戸内の穏やかな内海では見られない圧倒的な光景だ。

沖の島には港が二つある、弘瀬港と母島港だ。一つ目の弘瀬港を過ぎて母島港についに到着した。
見ると軽自動車が詰んであってクレーンで島に降ろしている。やっぱり小笠原の島のような四国らしからぬ光景。眼前の狭い谷間に民家が密集している。

雨だったので観光客も全くいない。ついに上陸!そのまま 憑かれたように狭い集落の路地を進む。まるでネパールかどこかの山岳集落のような立体的な通路が続く。

少しでも平地面積を増やすために通路に張り出した高床が多く見られる。その床を支えているのがなんと石の柱。沖の島は全島が花崗岩に覆われている。日本離れした光景だが島のエッセンスが詰まったような集落景観はどこから見ても美しい。

動物も見慣れないものが多い。巨大なマイマイに白いカニ。


ガジュマルに。

水滴のような不思議な木の実。

そして熱帯の極彩色の花たち。

しかし雨の孤島は静まり返り、人の姿を見る事はない。母島の集落を離れ、島のもう一つの集落である弘瀬へと歩いて移動することにした。

かつてこの島は土佐藩と宇和島藩に別れて統治された歴史的経緯があり弘瀬は土佐、母島は伊予と一つの島に異なる伝統や風習が伝わり、独自の風土を形成してきたそう。
雨で曇り空なのにハッキリと分かるほど海が綺麗。晴れていたらもの凄い透明度なのだろう。うっすら珊瑚礁が見える。

道中にはキャンプ場もあった。絶景にはり出す半島の上が全てそう。ここでフェスなど行われたらどれだけ素晴らしいロケーションだろうか。

沖の島は台風の通り道にも位置しており、植物の形がそれを物語っている。風の形だ。他のどこにも似てない光景は見ていて飽きない。

島の廃校。かつてはアートイベントなども行われていたよう。

弘瀬の集落が見えて来た。母島よりも開けた雰囲気。

港の入り口には巨大なアカウミガメの死骸が。膨大な数のカラスにたかられていた。

要塞のような巨大な防波堤が異様を誇る。

鴨の姿も。誰かが飼っているのだろうか。

その時防波堤に真っ赤な人影が。傘まで赤い!

近づくと背中にはArakiの字。心無しかアサヒビールのロゴに似てる。。

好奇心に勝てず話しかけると「こんな雨の日に何しにこんな島へ来た?後でウチへ寄って茶でも飲んでいけ」とのこと。メチャクチャ気さくなおじさんだった。

おんちゃんの写真

ひとしきり集落を散策したら明らかにあのおじさんの家だと分かる建物に旗があがっていた。

建物には居酒屋けん坊とある。声をかけると「中に入れ」的な声が。

中はお店のようになっていて何着もの真っ赤な服が干してある。パンツまで真っ赤。

通称ケン坊さんは家の中に招き入れてくれ、お茶を御馳走になりながら色々な話しをしてくれた。ここは店ではなく、あくまで気に入った人をもてなす場だそう。沖の島で産まれ育ち、赤い格好はかつて務めていた大企業から島に里帰りする際、人から見て自分だとすぐ分かるように赤い服装をするようになったことが始り。地方にたまにいる変わり者かと思いきや話す事は至極まともで「こんな島にあんな大きな防波堤作ってたらそら国も赤字になるわ」と至極全うな意見。メチャクチャ常識人でした。

「みんながみんな都会にならんでええ、全員が通信簿5ではつまらんのや。田舎は田舎でええ」と釣りの準備をしながら定年退職後の田舎暮らしを楽しんでいるケン坊さん。自宅に至ってはつい先週真っ赤に塗り終えたところだそう。現在進行形で進化中。

話し込んでいると来客が。たまたま里帰りしていたお母さんだった。この子が大きくなった時に島はどうなっているのだろうか。

外を見ると先ほどの雨雲はどこへやら、晴れ間が広がっていた。洗濯物を外へ干しご機嫌のケン坊さん。

帰りの船の時間が近づいていた。これを逃すと今日は島に泊まるしか無い。ケン坊さんがこれまた真っ赤な愛車の軽トラで港に送ってくれた。

帰りの切符は止まっていた車で購入する。

海の色は空の色。どんどん透明度が増して行く。夏はまさに楽園なのだろう。同じ海でも瀬戸内海と全く違う青だ。

段々と港に人が集まり騒がしくなってきた。先ほどの無言の島が嘘のようだ。

船が着くと島民総出の荷物の上げ下ろしなどで港は大変な活気に。これが見れてよかった。

「次は夏に来い!」と笑顔で見送ってくれるケン坊さん。最高にかっこいい大人。

船は速度を上げ、あっという間に島から遠ざかる。

来る時に見えた岸壁の神社も心無しか晴れやか。

船の周りをトビウオの群れが跳ねている。四国の最果てで、また素敵な人に会えた。今高松でこうしている時も、あの島では全く違う時間が流れているのだろう。それは違う星の話のようだ。

次は、夏にいこう。

32.7287469,132.5189782


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