高知の桜は今年、どこよりも早く、小春日和の午後に咲き始め、ぽん、ぽん、と小さな音を立てながら一気に咲きほころび、はら、はら、と空を舞いながら瞬く間に散っていきました。桜の季節がほんの一瞬だからこそ、咲くと同時にさみしさが芽生え、散ると同時に恋しくなるのでしょう。
あなたは今年、桜を見逃したそうですね。とても忙しく花を愛でる余裕のないまま春が過ぎていったことに同情を致します。今は、一年先の桜を想い、恋しい気持ちを募らせていることでしょう。
そんなあなたの恋心にわずかでも温もりが届けばと、桜の画が印刷された、高知県立牧野植物園のミュージアムショップ「バイカオウレン」でしか取り扱っていない、この便箋に手紙を認めています。
封筒3枚、便箋12枚からなるこのレターセットは、高知を代表する工芸品「土佐和紙」に、洗練されたデザインと温もりのある活版を取り入れた作品を手掛ける「TOSAWASHI PRODUCTS」、そして「日本植物分類学の父」と呼ばれる牧野富太郎博士の偉業が、絶妙なバランスの上に融合した結果、生み出されました。封筒と便箋に印刷されている桜は、牧野博士の故郷高知県佐川町で発見された「ワカキノサクラ」と呼ばれる品種で、原画は牧野博士が描きました。
まずは桜の画を指でなぞってみてください。ほんのわずかな凹凸を指先に感じることでしょう。亜鉛の版で印刷された、活版ならではの立体感が生きています。ゆっくりと何度も桜の上を往復させていると、封筒と便箋では、指先に伝わる触感が異なることに気づくはずです。1ミリ以下の便箋には、走る筆の邪魔にならないようごくごく淡くインクを乗せ、わずかなプレスで限りなく凹凸をなくしています。厚みのある封筒には、桜をはっきりと見せるため少し強めにプレスし、インクも濃いめに乗せています。
土佐和紙の風合いも楽しんでください。楮を原料に土佐市の「モリサ」が漉きました。便箋を光にかざすと、紙の向こうの風景が、ワカキノサクラの間から微かに透けて見えるはずです。この薄い紙に活版を印刷するため、活版の圧力を変えながら、何度も何度も試作を繰り返したと聴きます。
最後にワカキノサクラをじっくりと鑑賞してください。1,500種類以上の植物を命名された牧野博士は、植物を研究するために記載した精巧な植物図を数多く残し、その図のデザイン性、絵画としての完成度は非常に高く、現在では、画家としても評価されています。このワカキノサクラの原画はとても線が細く、繊細で、鉛筆で描かれたと聴きます。
牧野植物園で可憐な花を咲かせていたワカキノサクラの写真も添えておきます。
来春までこの便箋に何度も文を認めながら、桜への恋しい気持ちを募らせていると、桜は正直にあなたの気持ちに応えて、小春日和の午後に見事な花を咲かせてくれることでしょう。そんなあなたへ、万葉集に載っていたこの歌を贈ります。
去年(こぞ)の春 逢へりし君に 恋ひにてし 桜の花は 迎えけらしも
「牧野オリジナルレターセット」(1260円税込み)
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高知県立牧野植物園内ミュージアムショップByca-auren
高知県高知市五台山4200-6
Tel:088-878-1181