阿波PAから歩いてすぐ! 手軽に楽しめる天下の奇勝
「土柱」とは、土塔、雨裂天然溝とも呼ばれ、様々な地質的、気候的な特殊条件によって地形が柱状に造成されたもの。徳島県阿波市で見られる「阿波の土柱」は、130万年前の扇状地形が風雨による侵食と崩壊を繰り返す中で、それを免れた抵抗力の強い礫層や硬い岩盤が柱状に残り現在の形になりました。
世界的にも稀な地形である土柱の中でも阿波の土柱は一際大規模で、すぐ真下、真上と、間近に行って見ることができます。昭和9年には国の天然記念物に指定され、アメリカのロッキー、イタリアのチロルとともに世界三大土柱に数えられる「天下の奇勝」と言われるほどなのです。

真上から見下ろす波濤嶽、柵も何も遮るものがないので落下注意!
阿波の土柱は「三山五嶽」と呼ばれるように、小高い丘陵地にそれぞれに名前のついた大小5つの土柱群が点在しています。その中でも最も規模が大きく、圧巻なのが「波濤嶽(はとうがだけ)」。高さ約50メートル幅90メートルの剥き出しの崖地に、2つとして同型のものはない土の造形が林立しています。
そして、夜間は年中ライトアップされているので、夜まで滞在して暗転後の幻想的な土柱の舞台も同時に楽しむのがお勧めです。

ライトアップされた波濤嶽、闇夜に浮かぶ土の巨大造形
土柱のもう一つの魅力が、各土柱間を縫うように整備されたショートトレイル。適度なアップダウンのあるトレイルが、土柱の奇形を真下に見下ろせる崖上にも伸びています。また、幾度かの延伸を経て整備されたコースには、驚くほど多様な植物に覆われ、季節ごとの草花が彩ります。最高地点にある展望台まで行けば、波濤嶽とその向こうに見える吉野川が同時に眺めることができて、なんとも壮観。
「春霞波濤が嶽に浮び来て花の浪うつ小倉野の里」
これは、平安時代初期の文人菅原清公の歌で、土柱には歌碑も建っています。ちょうど桜が満開の頃、土柱に登りその景色を眺めた清公は、その景色にうっとりと見とれたようです。

遠くに望むは吉野川
戦後から昭和の終わりにかけて、土柱にはピクニックに訪れる親子連れであふれていたそうです。そう教えてくれたのは、土柱の目の前で戦後から宿を営んできた川人さん。土柱周辺は道が狭いため、当時はバスが土柱の入口から1キロ程下までしか入ることができず、そこから皆徒歩で土柱まで向かっていたとのこと。それでもその狭い道が長い行列になり、皆波濤嶽の上を目指してハイキングを楽しんでいたそうです。休日ともなれば、土柱の上には多くの家族が持参したお弁当を広げる風景が見られたのです。
残念ながら、今となってはそれほどの人出はなくなってしまった土柱…。
でも、今ではなんと土柱の至近にできた徳島自動車道の阿波パーキングエリアに車を駐めて、そこから歩いて土柱まで行けるようになっているのです。パーキングエリアが駐車場なので、高速道路をわざわざ降りることなく気軽に立ち寄りが可能という素晴らしい立地。こんなにもアクセスとサービスの良い奇勝が他にあるでしょうか!(もちろん入場も無料です)
ぜひ高速道路を利用しての四国周遊の際には、お忘れなくふらっとお立ち寄り下さい。
※「阿波の土柱」は随時見学可で、夜間ライトアップは夏期日没〜22時、冬季日没〜21時です。