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嗚呼絶景四国哉-12.夏の瀬戸内にきたら見てほしい景色

2013.7.24 

《愛媛》この美しさたるや 伊予西条、登道と栄町商店街

ura960

四国は、なんというか、たいした観光地がない。
だが、なんというか、某かの魅力はある。
ぴかぴかと光っていなくても、ぼんやりと光っている。
この「四国裏観光ガイド」とは、
四国のマニアックな魅力をガイドするコーナーである。

四国裏観光ガイドとは

小さな街の商店街でもまだまだ元気にやっていけた昭和の時代。
ただいま、平成25年。子どもながらになんとなく一つの時代が終わったと感じた昭和の終わりから、もう25年もの月日が流れてしまったということだ。
「あの時代は良かった。今よりもずっと人々は元気で、街にもテレビにも工場にも夜の街にも、今とは違う元気があった。」とはよく聞くけれど、まだ小学生だった私は半ズボンをはいて近くの公園でザリガニ釣りをしたりキン肉マンの消しゴムで遊んでいたから正直そんなのよくわからない。当然、街が「元気」かどうかなんて気にもしていなかった。

だけど、あの頃から街の姿がずいぶんと変わったことは知っている。コンビニなんて珍しかったのが、今や八百屋さん方が珍しい。デパートに行けば胸躍ったのが、今やデパートへ行くことの方が珍しい。ショッピングセンターと言ってもせいぜいクレープ屋さんがある大きなスーパーぐらいだったのが、いまやデパートなんかよりもずっと大きなショッピングモールが当たり前だ。
そして現在。街に買い物に行くことすら減ってきた。ネットでボタンを押せば大概のものは買える。ほんの少しずつだけど、「買い物の楽しみ」が「配達が届く楽しみ」に置き換えられつつあるようにも感じる。
・・・たった20年やそこらのあいだに、ここまで変わるとは。

四国の商店街はどうだろうか。高松、高知、松山といった県庁所在地の商店街はなんとか「商店街らしさ」を保ってはいるものの、丸亀、坂出、善通寺、観音寺、新居浜、西条、今治、宇和島といった人口10万人台の街の旧い中心商店街は、空き店舗率が3割5割あたり前の、もはや目を覆うほどの衰退ぶりだ。

そのひとつ、愛媛西条の商店街を散歩する機会があった。駅前から市役所へかけての細路地の両側に店が並び、一本横道には飲み屋街が広がる。登道、栄町上組、さかえまち、銀座街、紺屋町、アオイロード・・・アーケードの長さからしても、細分化された組合(?)の多さから見ても、古ぼけた看板から推測する店の業種の多彩さからして、かつては相当の賑わいを見せたことが想像できるのだが、一番駅前側にある登道から栄町にかけては開いている店の方が珍しい(空き店舗率は48.2%)。

「もうお年寄りしかここにはおらんしね。みっともないことになってます。うちも息子は継いでくれないし・・・」

栄町のある店で商店街の様子を聞くと、ため息混じりのコメント。高齢化と後継者不在はどこの商店街でも聞く言葉だが、それほどまでに地方都市の商店街では普遍的かつ乗り越えれない課題であり、難題である。長い長い歴史を持つ老舗であっても、実際に店の前を歩く人はいない、店が少ないから買い物を楽しんでもらうというレベルにもならない、となればその先行きはなかなかに難しい。暗い暗い螺旋階段をおりて行くように、ゆっくりとシャッターを落とす日を待つだけだ。

栄町上組商店街 向こう側が登道商店街。この手前、紺屋町方面は徐々に店が増えてくるが、それでもかなり少ない

栄町上組商店街 向こう側が登道商店街。この手前、紺屋町方面は徐々に店が増えてくるが、それでもかなり少ない


 

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パリのパサージュ

しかし、この街のアーケードは美しい。細い鉄骨で支えられた波板からはまるで陽だまりのような優しい光が落ち込んでくる。道は緩やかにカーブを描き、商店街の全体を見通すことは難しい。だが、それがまた独特の暗さと表情を町並みにもたらす。比較するには無理があるかも知れないが、パリのパサージュで見たような暖かみすら、ここのアーケードには感じるものがある。
アーケード沿いに並ぶ建物は明治大正に建てられたという古い町屋から、モルタルの昭和感溢れる建物まで多彩だ。時代の変化に抵抗することもなく一軒一軒が静かに閉じていったのであろう、意匠を凝らした店構えや看板はそのままに錆び付き、煤け、傾いている。「平成」的な新しさを感じる店はもはやひとつもなく、この20年の間に新しい店が生まれたことなぞなかったのかも知れない
さきほどの店の人はいう。あと10年もすれば、全部たたんでいると思いますと。
申し訳ないけど、合点。

栄町上組商店街のアーケード。ゆるやかな曲線と日差しが心地よいが、開いている店は本当に少ない

栄町上組商店街のアーケード。ゆるやかな曲線と日差しが心地よいが、開いている店は本当に少ない

もともと商店街の困窮は市街地の拡大、すなわち郊外化と“車がなくては生きていけない社会”の進展からはじまった。ここ20年の商店街の天敵は車でいけるコンビニやSCであり、四国どころか全国各地の商店街のどこもが抱える課題だったといえる。
いま、この流れは郊外の高齢化、市街地の地価下落が起きたことで徐々に逆流を起こしつつあるように見える。西条でも栄町商店街から歩いて数分、車通りの多い県道に面する紺屋町商店街一帯をテナントビル+分譲マンションとする再開発「ソレイユ紺屋町」が進められており、来春には完成をみる予定だ。10万人規模の西条市で100戸ものマンションが街中に生まれるインパクトは相当に大きいはずで、きちんと埋まれば確実に界隈に人通りは戻るだろう。

だが、これからの商店街の天敵はネットかも知れない。20年前に現在の商店街が想像もつかなかったように、この先20年の商店街も想像がつかない。ネットを使わないお年寄り層がいなくなり、ネットが当たり前の層が購買層の主力となった時、商店街という業態はどこまで維持できるのだろうか。

そうした未来がぼんやりと見えるなか、西条の取り組みは吉と出るか? ぜひとも吉と出てほしいものだし、うまくいけば地方中都市におけるひとつの道しるべとなるかもしれないが、コンビニ、SCに続く3番目の波とどう付き合うか、それもまた一つのカギになるような気がする。

そして・・・・紺屋町がうまくいったとして、10年後の栄町や登道はどうなっているだろうか。ソレイユからは歩いて数分の距離がある。この距離すら、現代の田舎では「遠い」。

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