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坂出人工土地

2013.6.6 

《香川》嗚呼、60年代を語る建築[坂出人工土地の魅力]

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ura960

四国は、なんというか、たいした観光地がない。
だが、なんというか、某かの魅力はある。
ぴかぴかと光っていなくても、ぼんやりと光っている。
この「四国裏観光ガイド」とは、
四国のマニアックな魅力をガイドするコーナーである。

四国裏観光ガイドとは

数少ないメタボリズム建築

坂出駅から寂れた商店街を少し歩くと、ちょっと異様な建築物を発見する。
坂出人工土地。1968年の建築物だ。

その名称はなんとも不可解な言葉の羅列に見えるが、実際に訪れるとこの言葉の印象は案外としっくりくる。
この建築は、広島の基町アパートと同じようにスラム化していた住居群を建て替えたもので、黒川紀章らが起こした建築運動であるメタボリズムの一員でもあった大高正人の代表作のひとつだ。
メタボリズムとは、エキスポタワー中銀カプセルタワービルなどに代表される、都市や建築の新陳代謝をテーマに都市や建築を構想するもので、60年代には日本発の世界的な建築運動だった。多くの建築はそのコンセプト通り、建物の部分的な交換や追加ができる仕組みを取り入れたものだったが、結局高度成長を迎えた70年代には廃れてしまい、90年代から近年にかけてほとんどが皮肉にも“新陳代謝”を果たせずに取り壊されてしまった。
その中で、ここ坂出人工土地は数少ない残されたメタボリズム建築なのである。

青臭さも残る豪気な設計

sakaide

キレイな駅前から続く、古いアーケード。それが途切れたところに坂出人工土地はあらわれる。1Fの道路側は若干セットバックして建築本体が天蓋がわりとなり、道路沿いには商店と駐車場が並ぶ。どこから入るのかよく分からないが、なんとなく中へ入っていくと建物内にまたアーケードがあり、そのすぐヨコにあちこちで鉄筋が剥きだしになった階段が上へと導く。
まあここらへんは最近の大規模集合住宅でもよく見られるようになったつくりなのだが、2Fから上の趣が違う。「人工土地」の名の通り、この建築の肝は地盤をそっくり持ち上げて平面的な「土地」を2Fレベルに造成し、この土地の上にあたかもそこが地平であるような振りをしてアパートが雁行状かつ立体的に並べられるところだ。
各住戸は今となってはどうにも狭苦しい印象があるが、4〜8戸単位のボックス型のアパートが庭や広場、階段といった公共空間を挟みながら巧みにずらして配置され、動線や視線のほどよい交錯を「土地」の上に生み出している。一部の住戸は廃墟と化しているものの、あちこちから姿は見えないが住民の談笑する声が響き、若い人も若干ながら出入りをしている。また、驚くのは2Fまで車が上がってきていることだ(「ここが何階なのかわからなくなる」高知の沢マンとも相通じる部分がある。沢マンについてもまたいずれ書く)。
で、なんとなくだが、私がまだ建築の図面らしきものを美大で書いていた時代を思い出した。なんというか青臭いのだ。集合居住の建築はかくありたいよねという、若々しい建築家の理想型を見るようで、面白いのだけど一方でなんだか面映ゆい。

坂出人工土地

四国の「現代化」遺産?

多くのメタボリズム建築がそうであったように、ここ坂出人工土地でも「新陳代謝」は見事に進まず、見る限りは居住者の高齢化と建築の老朽化がどんどん進んでいる。1Fアーケードの商店もほとんどが店じまいをし、あるのはカラオケやカラオケスナックといった、おそらくは住民の集会施設がわりの店子ばかりだった。

正直、このままだと取り壊しなどの話が出てもおかしくはないが、気になる建築があったらまず見に行くようにしているサイト「建築マップ」の筆者さんは

「現状のまま手を加えずに保存するべきではなくて、むしろ人工土地の枠内でスクラップ&ビルドをするのが本来の使い方なので良いと思う。具体的に言うと、空室に関してはリノベーションを施すか部分的に建て直したり増築したりして上層にも店舗を入れる。チャレンジショップ的な用途を想定して賃料を低く抑えたり、入居者の改造を許可するのもよいだろう」(ARCHITECTURAL MAP|坂出人工土地

との指摘をしている。まあそれも今の坂出の市街地の状態を見るとちょっと難しいような気もする(数年前、丸亀の商店街でもチャレンジショップとかをやっていたが、閑古鳥にしか見えなかった・・・)し、たとえば築後100年とか超有名建築家の建物といった「わかりやすい建築」でもないから、なかなか予後は良くないようにも思える。まあすぐに取り壊しとかはなさそうだけど、このままの不遇な扱いは続きそうな空気が漂っている。

四国には、同潤会アパートのような「時代を語る建築」はそうそうない。坂出人工土地のすぐ目の前から始まる商店街も既に風前の灯火だが、歩いてみれば少なくとも80年代くらいまでは結構賑わっていたのだろうなと思える雰囲気があった。そうした点で、この坂出の人工土地を含む一帯は60年代から80年代にかけての、小さな地方都市でもまだまだ自身の力で充分やっていけていた時代の「証人」に見えてくる。これはやっぱり、見ておかねばならない建築であろう。

坂出人工土地

(香川県坂出市)

34.315509,133.85641

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