「つわものどもの夢のあと」
愛媛の東の端に生まれた私にとって、そこは未踏の地だった。車の前を飛ぶ鳥たちに案内されるかのように、木のトンネルをくぐりながら半島を走り、たどり着いた先にあらわれた海。四国の西の海ってこんな顔をしているんだ。断崖絶壁で青く力強い。けれどとても静かで、瀬戸内海とも太平洋ともどこか違う気がする。
戦時中は海中に機雷が設置され、ここで海軍が日夜監視に当たっていたという。この静かな岬も、当時は騒がしく緊迫していたのだろうか。そんな時代に思いを馳せながら、「つわものどもの夢のあと」と書かれた看板と、海の向こうを眺めた。もう来るチャンスはないだろうからと立ち寄った最南端、次は夕日が見たい、野地菊が見たい、鷹の渡りを見たい、九州が見たい、違う青が見たい・・・、きっとまた来ることになるのだろう。
(愛媛県愛南町)
32.907262,132.472801