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プラチナプリントのために生まれた「土佐白金紙」開発ストーリー[4]

《徳島》ガラパゴスっぷりが癖になる!牟岐・出羽島アート展2015開催中!

2015.3.14 

土佐人のものづくりの底力を見よ。ちょっと濃すぎる高知県立桃源郷。(22日まで)

高知県人=ラテン気質(by安藤桃子監督)であることがよくわかる展覧会

ビリッケツでナンバーワン。
それが、高知県。

飲み会にかけるお金の額は圧倒的に日本一(よく酒を飲んでいる)、 喫茶店店数も日本一(よく珈琲を飲んでいる)で ビール消費量もトップクラス、 パチンコの店舗数もトップクラス。

街中のアーケードがぜんぶ居酒屋になるという県外の人からしたらもう変態の域に達しているとすらいえそうな「土佐の大おきゃく(今週末14〜15日開催)」をみてもわかるように、要は趣味と娯楽と酒に金と時をとことん費やすのが高知県民であり、働くということは遊ぶため、酒を飲むための行為だともいえてしまうのが高知県民なのである。

遊んでばかりだから、当然 県民所得 最低賃金 工業製品出荷額はビリッケツ。だけど酒もビールも止められないし、止めるつもりもない。

「それはまあ仕方ないろ、でもえいやか、楽しく生きちゅうし」

まあ陽気だ。ただただ陽気だ。
安藤桃子監督も高知への 移住の理由に掲げていた、高知県人の高すぎる「ラテン気質」というのは、間違いなく正しい。
ムリのない範囲でそれなりに働き、欲望の赴くままに好きなことをやる。
四国山地という厚い厚い壁に阻まれて、他の四国三県とは明らかに異なる生き様を強いられてきた高知では、そんな人格形成が自然となされてきたのかも知れない(注:全県民ではありません)。

そして、それは感情の赴くままに筆を取り作品を作り上げる「生の芸術」とも称されるアール・ブリュットの精神をこの土地に自然と根付かせたのかも知れない・・・と妙に得心させてくれるのが、今月22日まで高知県立美術館で開催されている「高知県立桃源郷 新・高知の造形文化展」だ。

この展覧会は、とにかくおかしい。

何がおかしいかって、ここはかりそめにも高知を代表する公立美術館である。京都の『ダムタイプ』の初演をさらっとやってのけたり、世界有数のシャガールコレクションを有していたり、柳幸典の名作『ヒノマル・イルミネーション』なんかを普通に隠し持っていたりする県立の美術館である。
そんな美術館に、高知のおじちゃんたちが精魂こめてつくりあげた、まあひとことでいえば「変態」の領域にまで達したものづくりの極致とでもいうべき『作品』が並んでいるのである。

というわけで入館してみましょう

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館の入口で待つのはサイケデリックな看板。
すいません、私が本展を企画された松本教仁学芸員からの指示を受けて制作したものです。
「下品で上品、気品のあるものを」という無茶な注文を受け、本展の企画の源ともなっている秘宝館をイメージしたフォントを調製して作ったものであります。

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さて、まず出迎えるは高知県本山町にある私設公園「モイア橋本」の「着ぐるみロボット」。
なにがおかしいかって、もう単純に「着ぐるみロボット」というその響きである。
ドラム缶を中心に、パイプや車の部品、旗のポールなんかをくっつけて、見事に1970年代的ロボットが構築されている。
これは3月15日14時から実演の予定なので、お時間のある方はぜひに。

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次に出迎えるは完全なオーバースケールの「かつらみこし」。
これは現在準備中の本展のドキュメント(3月末頃発行)で見ることができるが、
高知市の出雲大社で美容師さんやブライダル関係者さんが「かつら」へ感謝しようとの思いから奉納されているもので、高さは1.2mにも及ぶ。かつら本体の内部にはたくさんの人から献納された本物の髪の毛が納められているということで、その場違いさとあわせて奇妙すぎる空間をつくりだしている。

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そして古くからの町並みが多く残る佐川町の名建築を1/20スケールで再現した栗田眞二さんの模型群
建築屋さんがつくっているわけでも、誰に依頼されたわけでもなく、ただ作りたいから作っているという代物なのだが、その完成度はハンパない。本展で展示されているのは「司牡丹酒蔵」や「濱口家模型」だが、圧巻は写真の「深尾家模型」。

かつて佐川にあってこの一帯を治めた土佐藩家老深尾家が暮らした佐川土居の再現模型だ。
いま、佐川土居はただの田んぼになっておりその痕跡を辿ることはほぼできないのだが、この模型は当時の家老の暮らしの息づかいをそのままに伝えてくれる。

この他にも、佐川町の地場産センターでは、佐川の名士牧野富太郎生家、国の重要文化財竹村家住宅など数多くの建築模型をつくりあげているので、佐川を訪れる機会があるときはぜひご訪問を。

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この向かいにあるのが、安芸市のお寺を精密に再現した濱田稔さんの模型
こちらは実際に棟梁としてはじめて自分が建てたお寺を1/15で「もう一度」つくりあげたもの。
向かいにある栗田さんの模型群の迫力がすごいので霞みがちだが、「建てる機会がなかった」からオリジナルの設計で作ったという五重塔の迫力とあわせ、その丁寧なしごとぶりには肝を抜かれることだろう。

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個人的に一番すきなのは、この精巧タンカー船模型だ。
こちらも濱田さんと少し由緒が似ていて、かつて貨物船の船乗りとして世界中をかけまわったという川崎道夫さんが、その引退後に四万十町志和の自宅で「退屈しのぎとボケ防止」にとタンカーをつくりはじめた、その「成果物」だ。
材料は家の中にある不用品や100円ショップで買った「それらしい材料」だというから、そのコンセプトは冒頭のモイア橋本の着ぐるみロボットにも通じる味わいがある。

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なるほどよく見れば「見覚えのある」パーツがあるのだが、あまりにもリアル。
子ども時分、ガンプラに燃えた時代にも全く別のモノを違うモノに「見立て」てジオラマを作ったりしたことを思い出すが、その作り込みがハンパないから「元の姿」が思いもつかない。

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そして・・・・隣の展示室はまた珍妙。
いきなり出迎えるは巨大なシャチホコ。
画面全体の様子がおかしいです。

ちなみにこれ、高知県立美術館のれっきとした展示室であります。

悲しきモンスター・・・初代・武市半平太像

左に見えているパースが狂ったような写真は、あの幕末の志士、武市半平太のかつての銅像の写真だ。

銅像といえば普通はかっこのいいもの。
されど、これは等身もおかしく、肩の位置も変、顔もなんか変、右手は妙に突っ張っているなど、その香ばしさは本展屈指のもの。これは、デザインの仕事をしていてもたまにあることだが、「いろいろな人の意見」を聞き入れるうちにどんどんおかしな方向へ走っていって、結果引き戻ることができずに諸々の要望オールミックスで完成の日を迎えたという・・・作者からすればもう二度と見たくない仕上がりの逸品という、まことに悲しいモンスターなのである。

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作者の悲しさ、どればかりだったか。
そして、意見を言いすぎた面々の悲しさと空しさ、どればかりだったか。

そのことに思いを馳せる時、涙と笑いが同時に静かにこみあげてくる(ちなみにこの銅像の本来の原型は田野町の福田寺にあり、普通にかっこいい)。

横浪の初代武市半平太像

手前にあるのが手首と刀。奥の写真が建立されていた当時の写真

そして、この銅像の運命がまた素晴らしい。結局わずか数年のうちにこの銅像は刀を持つ手首から先を残してこの世から姿を消し、いまでは「普通にかっこいい」武市半平太が同じ位置(武市とは特に何の縁もないはずの須崎市の横浪スカイライン)に聳えている。

だが・・・この銅像が今でも残っていたらどうだっただろう。きっと今の時代であれば、失笑を買いつつも今の像よりもよほど多くの人が訪ねたのではないだろうか。
事実、新しい武市半平太像は建どういうわけかとても地味で、観光ルートからもほぼ外れているのが現状だ。高知駅前の三志士像のひとつとして武市像が設けられるようになったとはいえ、その実物を見たことがある人はとても少ないのではないだろうか。
(注:記事に重大な間違いがありましたので、3月14日14:10に訂正しました)

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ちなみにこちらが高知駅前に立つ三志士像。内藤廣設計によるかっこいい駅舎を囲むように、あろうことか日陰のほとんどない広場とそれに背を向けたコーナン、地味すぎる国合同庁舎、三志士像が建つカオス空間。特にこの10年、建築には力を入れるがランドスケープに関しては全く「ものづくりの精神」を発揮しないのが高知県の特徴だ。

龍馬好きすぎ高知県

さて、最後に紹介するのが巨大な坂本龍馬像だ。
この像はかつてある宗教団体のイベントで作られたもので、その後長いあいだとある会社の倉庫で眠っていたものを本展のために引っ張り出してきたのだそう。大きさは桂浜のものとほぼ同寸の4.5mで、素材は実は発泡スチロール。

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高知には桂浜のホンモノ、この発泡スチロール像、梼原町の志士群像、そして高知駅前の三志士のものと、坂本龍馬像が4つもあるということになるわけで、どんだけ龍馬好きなんだと改めて微笑むしかない次第(現在は無い物も多いが、 とあるページでは35もの坂本龍馬像が高知県内で確認されている)。本展ではこの他にも右に小さく見えている蝋人形の坂本龍馬、珊瑚造りの坂本龍馬、からくり人形の「茶運び人形・龍馬くん」も出品されており、ものづくり人の琴線に触れる何かがあるのかも知れない。

会期はあと9日足らず!急げ!

本展では、この他にもまだ紹介していない作品がいくつか。
会期は22日までと残りわずかだ。
高知県人の「趣味と娯楽」の極致をどうぞご覧あれ。

高知県立桃源郷 新・高知の造形文化展


2015年1月11日(日)~3月22日(日)会期中無休
ウエブサイト

出品作家および作品:
本山町の私設公園「ストーンロード モイア橋本」(橋本晁光) 手づくり・着ぐるみロボット
高知市・前川泰山作による総白サンゴづくりのホワイトライオン「王威」(高知市・日本サンゴセンター所蔵)および「珊瑚の龍馬・暁翔」
四万十町・川崎道夫制作の精巧タンカー船模型
香南市・四国自動車博物館蔵・戦後高知が生んだバイク「ブルーバードMC型」および「コンドル」
安芸市・濱田稔制作の安芸市清水寺および五重塔手づくり模型
南国市・高知県立高知東工業高等学校自動車工作部部員制作の「茶運び龍馬くん」
佐川町・栗田眞二制作の「佐川町名建築群模型(深尾家・濱口家・司牡丹酒蔵)」
かつらまつりの会・巨大「かつらみこし」(高知市・出雲大社土佐分祠蔵)
安芸市・(株)長野瓦蔵の巨大「しゃちほこ」(瓦谷市太郎作)
四万十町・海洋堂ホビー館四万十・宮脇修館長コレクションの大木「根っこ」
香南市・創造広場アクトランド(旧龍馬歴史館)蔵「世界の偉人蝋人形 坂本龍馬・ジョン万次郎・藤山寛美像」
越知町・(株)岩や制作の「梅の木と竹林 人工樹林インスタレーション」
高知市・川村浩司蔵「巨大・坂本龍馬像」
横浪黒潮ラインに設置された初代・武市瑞山銅像(昭和54年、二口金一制作。現存せず)の佩刀および台座扁額(高知市・瑞山公民館蔵)
and More・・・

ドキュメント
会期終了後まもなく、本展で展示された作品群をまとめたドキュメントも発行される。

高知県立美術館


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