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連載「ここで暮らすと決めました」第四回 活気あふれる集落

《徳島》蒲生田岬に新しい絶景が生まれた話

wikipediaー瀬戸(列車)より

2015.1.16 

北斗星とトワイライトが消え、サンライズだけが残った

消える寝台特急

東京・札幌を結ぶ「北斗星」を最後に、青い客車の寝台特急「ブルートレイン」がなくなってしまう!と、世の中は一部で大騒ぎである。

しかし、そもそも40年以上前につくられたレトロな客車ばかりとなっていたブルートレインに、
もはや明るい未来は用意されてはいなかった。
新幹線が各地で開通し、高速道路や地方空港の整備も一息ついた今、
高速バスよりも鈍足なのに料金はしっかり高い、
だけど設備はそれなりでしかないブルートレインは、
テコ入れするにも微妙な立場の列車になってしまったのである。

こればかりは時代の趨勢であり、
国鉄からJRという、地域単位の企業体へと移行したそのツケのひとつともいえるだろう。
・・・そういう意味では、分割民営化から28年もの間、これを維持してきたのはすごいといえばすごい。

大阪から札幌へ向かう「トワイライトエクスプレス」は廃止が決まり、
全席A寝台の豪華寝台特急「カシオペア」も先行きは不透明。
「北斗星」は臨時列車化ということだが、「日本海」も「あけぼの」も「北陸」も臨時列車になったが最後、ちょっとだけ走っただけで運行はされなくなった。
客車の維持の大変さを考えれば、「北斗星」もまもなく完全に消える列車、ということになるのだろう。

さて、そんな寝台特急冬の時代に、「ふつう」に乗れる寝台特急として残ることになったのは、
それぞれ高松と出雲市へと向かう「サンライズ瀬戸・出雲」だけとなった。

まさか瀬戸と出雲が残るとは

いまから30年前、最期まで残る寝台特急が瀬戸と出雲だなんて、誰も想像だにしていなかった。
子どもの頃東京に暮らしていた筆者は、
夏休みになると母の田舎がある島根へとまだブルートレインだった時代の「出雲」で帰っていた。
四国の高速道路がまだまともになかった浪人生時代も、やはりブルートレイン時代の「瀬戸」で高松まで帰り、そこから「南風」に乗り継いで帰ったりしたものだった。

子どもの頃は、国鉄マンの父を持つ九州生まれの友人と仲が良く、
「さくら」や「はやぶさ」といったスター特急で地元に帰るその友人は
食堂車もなければA寝台もついていない、
「出雲」や「瀬戸」というあまりに地味すぎる特急で帰る私を嘲笑ったものだった。

しかし、九州行きや東北行きの「スター」の命は、突然に終わりを迎えた。
冒頭にも書いたように、新幹線の開通や高速道路、航空路の整備が進んだ彼の地では、
スターがスターらしくあることを許さなくなってしまったのだ。

一方、出雲と瀬戸の走る山陰と四国には、新幹線はどれだけ未来永劫やってくる気配はなく
(政治家はもちろん諦めていないが、通す必要を普通の人は一切感じていないのではないだろうか)、
高速道路もここ10年でやっと整備が追いついた程度。

九州や東北に比べると不便な土地として残ったからこそ、寝台特急の残る隙間が残されたのである。
また、九州や東北のように交流電化ではなく山陰や四国は直流電化であったということも、
電車の建造維持費が安き、電車化の道が残されたということだろう。
おそらく、電車化されていなければ今頃出雲も瀬戸も黄泉の国にいたはずだ。

しかし予断を許さない

新しく専用の電車をつくってから20年にも満たないサンライズは、ふつうに考えればまだまだ安泰だ。
しかし、サンライズ出雲は聖地ブームの影響もあって乗車率が高いとされる一方、サンライズ瀬戸は「それほどでもない」とも聞く(サンライズ出雲の好調にあやかって去年の夏は琴平までの延長運転を試みたものの、
事故やらなんやらで琴平まで運転中止になることも多く、「琴平に着けない」ことが話題になったりもした。)。

高速バスと飛行機のちょうど中間のような料金設定で、
飛行機よりは朝早く目的地に着き、バスよりは当然快適。
それなりに便利で快適だけど、LCCが四国にまでやってくるようになった今、
また高速道路がしっかり宇和島や四万十あたりまで通り、豪華座席のバスも当たり前に走り出している今、
サンライズ瀬戸が狙っていたスポットは徐々に埋められているような気がする。
すなわち、ビジネス用途のお客さんはこの先減る方向で進まざるを得ない。

そう考えると、観光用途としてのプロモーションに成功したサンライズ出雲の方向を瀬戸の方もこれからも太めていくべきなのだろう。
寝台特急がほぼ壊滅した今、最期の夜行列車としてもう少し「旅情」方面を演出することを考えるのもアリに見えるし(基本寝台しかないので、無理だろうけどロビーカー的なものを一両加えるとか)、サンライズ+島めぐりやサンライズ+うどんのコースをプロモーションするとか・・・

なんにせよ、せめて東京への移動時はサンライズを使おう!と思うのだが、そういうときに限って満席だったりするのはなぜだろうか。

写真はwikipediaー瀬戸(列車)より


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