霜が降りた。
朝の気温は、2度。
奥深い山あいに集落が点在する秘境・祖谷。
晩秋の山里に、冬が来る。
そこまでやってきた厳しい季節を前に、集落の人々は、冬支度に追われていた。
年季の入った運搬車で、急峻な斜面を登る。
田んぼの脇にはお地蔵さんのような石碑がある。
聴くと、ご先祖様の墓だという。
祖谷地方、特に落合集落では、昔から家族が亡くなると、家の周囲に埋葬してきたという。
空には秋の雲。
この日は、天日で干していた稲と蕎麦を脱穀する日。
「寒い祖谷の米は美味しくないから、昔はもち米を作っていた。
でもこの頃は冬も暖かいから、普通の米も美味しくできるようになった。
そこで今年は、初めてあきたこまちを植えてみた。
きっとうまい米になったはずだ」。
秋雲の下、ススキがそよぐ。
どこか寂しげに、どこかはかなく・・・
落合集落に週3日だけ開く「なこちLIFE SHARE COTTAGE」では、10月中旬からお食事が頼めるようになった。
この日、頂いたのは、ジビエ料理のランチ。
イノシシのスペアリブと汁が、たまらなく美味かった。
川向かいの山あいに、焚き火の煙が浮かぶ。
その美しさに、店主の稲盛将彦さんは縁側にたち、カシャ。
稲盛さんとのお話にも花が咲き、気がつけば夕暮れ。
名残は惜しいが、晩秋の祖谷に手を振って別れた。
徳島県三好市東祖谷落合