四国は、なんというか、たいした観光地がない。
だが、なんというか、某かの魅力はある。
ぴかぴかと光っていなくても、ぼんやりと光っている。
この「四国裏観光ガイド」とは、
四国のマニアックな魅力をガイドするコーナーである。
徳島県の阿波踊り、高知県のよさこい祭りとともに四国三大祭りの一つに数えられる愛媛県の新居浜太鼓祭り。だんじり祭りや、はだか祭りなど有名な男の祭りがある中、この新居浜太鼓祭りの真の男らしさをご存知だろうか。
起源をたどれば古くは平安時代、鎌倉時代まで遡ると言われる。神輿に供奉する山車の一種で、豊作に感謝して氏神に奉納していたもので、いわば信仰を対象としたものであった。太鼓台自体も今よりも小さく、飾り幕も派手さは少なかったが、その後、別子銅山による地域経済が発展するにつれて、太鼓台は急速に巨大化、飾り幕も立体刺繍が施され、また地域ごとの対抗意識も相まって現在の「新居浜型」と言われる太鼓台に発展してきた。
「豊」と言う文字を形取った、とも言われるこの絢爛豪華な太鼓台、高さ約5メートル、かき棒の長さ約10メートル、重さは2トンほどで、一基何と平均5000万円程度と言われ、それが新居浜各地域に1台づつ、50基以上はあるのだから驚きだ。
絢爛豪華な太鼓台から放たれる腹にどんと来るような太鼓の響き、かき棒にまたがり運行を仕切る男たちの笛を吹きながらの指揮、かき棒を担ぐ男たち(かき夫)だけの力で太鼓台を動かす「かきくらべ」など、見ているだけでぐーっと熱くなってくる。
この祭りが最もアグレッシブな男の祭りと言える最大の理由、それは「激しい鉢合わせ」だ。その激しい鉢合わせから”喧嘩祭り”とも言われる。
鉢合わせした地区の太鼓同士は、戦闘態勢に入ると、太鼓台から立体装飾を撤去。これが「かかってこんかい!」という合図になる。ゆったりとしたドン、ドン、ドンという笛と太鼓のリズムが、徐々に早くなってくる。
その音の高鳴りと共に、観衆の興奮もマックス、緊張とワクワク感。そして、かき棒同士の激しいぶつかり合い。まるで格闘技を見ているように血が騒ぐ。ぶつかり合いは数十回から百回以上におよぶこともある。
今年も運営委員会は、より徹底した安全な祭り「平和運行」を促していたが、初日の朝から「鉢合わせ」はあったようで、警察の機動隊に追随されてホームベースに帰っていく太鼓台を目撃。太鼓台には生々しいぶつかり合いの跡があった。
愛媛県の他地域とは完全に違う、独自の発展を遂げてきた「新居浜太鼓祭り」。
新居浜は漁師町でもあるので、漁場の争いなどを祭りの中で解消するようになったのか、などと想像が膨らむ。
なぜこの地域だけこのようなスタイルに発展してきたのか。なぜ喧嘩をするのかと聞かれてもその答えは謎であるが、新居浜の神様はお祭り騒ぎ(喧嘩)が好きなのかもしれない。
祭りの見方は、回りをよく見てくれぐれも注意して。喧嘩そのものではなく、その奥にある男らしさを満喫すべし。