「里山」という言葉から何を連想しますか?
山のふもとに点在する家々。
瓦屋根の間にはまだ茅葺きが残る。
母屋と離れがあり、庭には柿の木。
軒先には大根が干されている。
家の回りには、大きさも形もまちまちな田んぼ。
ちょとちょろと水の流れる水路には、ヤゴ、ゲンゴロウ、カエルが生きる。
集落の裏手には、杉の木が並ぶ鎮守の森。
森の入り口には、丁寧に掃き清められた境内がある・・・
四万十川の中流域で、日本昔話のような里山に、出会った。
四万十町の中心地・窪川の市街地を抜け、坂を降りると四万十川に突き当たる。
川に掛かる小さな橋を渡ると、寄り添うように農家が軒を並べる集落がある。その中心には鳥居が見える。
土地を守る「産土神(うぶすながみ)」として、6世紀ごろに建てられたと言われる高岡神社。
五つのお宮が並ぶことから地元では「五社さん」と呼ばれ親しまれている。
35ミリレンズのついたカメラを首からぶら下げて、境内に入る。集落を歩く。
傾いた日差しに映える木々のシルエットを撮る。
農家の軒先のタマネギに見入る。
ゴミ一つない境内を歩きながら、神社を大切に守ってきた人々の生き様に、思いを馳せる
静かだ。
カシャ!
自分自身で押すシャッター音が、無粋に感じられるほどに、穏やかな時間がすぎていく。
人の近づくことの出来ない前人未到の頂きよりも、
人を拒絶する厳しい自然の大地よりも、
人のにおいのする、里山に、暮らしたい。
10月末現在、まだ暮らす家は、見つかっていない。