高知県香南市吉川町。
物部川の河口に接するこの町の沖合で獲れる新鮮なイワシの稚魚(しらす)を用い美味しさ抜群の「ちりめんじゃこ」を作っているのが「土佐角弘海産」さん。
彼らのちりめんじゃこ作りは、信頼する漁師さんが漁に出るところから始まります。新鮮なしらすを求めて、初めてのしらす漁に同行させていただきました。
漁場を求めて吉川漁港を出航
土佐角弘海産のちりめんじゃこ加工場は吉川漁港からの道路を渡ってすぐ。目の前には太平洋が広がっていて、ほとんど自分の海、と言ってしまいたいほどに漁場と加工場が大変近く、新鮮なしらすを仕入れる条件に恵まれています。
朝7時、吉川漁港より出航。信頼する漁船のひとつ「勇進丸」の漁を、土佐角弘海産・北垣博則さんと一緒に追うことになりました。
この季節は漁獲高の多い春先とは違って、大漁という日は少ないようですが、漁に出られる天候の日は漁に出ます。
魚群を求めて吉川漁港から30分ほど西に移動。
「今日はいつもより遠くに来たねえ」。
出航から約1時間半ほど経った頃、魚群をやっと探知。2隻の漁船でしらすを囲み込んでいくように、引き網していきます。
私が乗っている船は、替え網と、獲れたしらすを受け取るための船で、一回の漁を3隻で行うのです。
「こりゃあ、今日のはこじゃんとえい!」(「こじゃんと」は「とっても」の意味。今日の(魚は)とてもいい!)
揚がったしらすはとてもきれいで、小さな異魚種の混じりも少なく、透明感があってキラキラしている!
毎日漁に出る漁師さんだからこそ、日々の魚の違いが分かるのですね。
吉川町の沖合では、季節によってイワシの稚魚の種類も移り変わっていきます。この日は、「カタクチイワシ」の稚魚が獲れました。
「食べてみいや!」漁師さんがかごを指差してくれました。
生しらすが大好物の私にとっては人生の夢のひとつが叶ったような、感動の瞬間!
生しらすは高知では「どろめ」と言い、珍味としてとても愛されています。
すぐ競り、すぐ購入
水揚げ後、すぐ競りにかけられます。競り上げる方は手に取って稚魚の品質を確認します。
今日お世話になった「勇進丸」が獲ってくださった生しらすを競り上げて、軽トラで即座に加工場へ走ります。「今日のはほんまえいね!」と軽トラを見送りながら一仕事終えた漁師さんの顔がほころびます。
すぐ加工場へ
移動時間約1分!競り上げたしらすはすぐさま加工場へと移動し、すぐに洗いにかかります。タイ仔、アジ仔、カマス仔など所々に混ざっている異種魚を取り除きながら、その間に釜出しの釜の湯を沸かし準備していきます。
釜ゆで
釜でゆで揚げます。魚種や、その日の天候によって塩加減も調整します。ゆで時間はほんの1分半ほど。この釜からゆで揚げたままで仕上げたものを「釜出ししらす」と言っています。(他では違う名称の場合もあります)粗熱を取ってできあがり!
加工場に直接行って、もし、釜ゆで作業に遭遇できたらラッキー、釜出ししたばかりのふわっふわの「釜出ししらす」がゲットできるかも。
天日干し
釜出ししたしらすは加工場横屋外にある網に広げて、全て手作業で天日干しします。
まんべんなく乾燥させるため、その日の天候や風を見ながら、乾き具合を確認し、魚を傷つけないよう、時々丁寧に返す作業をします。簡単そうに見えますが、何と言っても自然が相手。ちょっとしたことで乾燥具合も変化するので、実は地味に手間のかかる作業なのです。
選別
ちりめんじゃこに異種魚が混入していないか人の目と手で確認、選別します。
できあがり!
海からいただいた恵みに人の手を経て、おいしいちりめんじゃこが出来上がっています。
ちりめんじゃこ盛りを製造直売所で食べられる!「ちりめん丼セルフ販売」準備中。
作りたての「ちりめんじゃこ」をその場で食べていただきたい、という北垣さんの思いで、加工場横に小さな飲食スペースを準備中とのこと。
しっかりしたお食事処というよりも、讃岐うどんの製麺所に行って食べるうどんのような感覚。
自分でご飯をよそって、好きなだけ乗っけて食べる!少しワイルドなセルフサービススタイルが楽しそうです。
製造直売!直接行って購入できます。天候、不漁により用意できない日もあるので、来店前に電話でご確認を。
有限会社 土佐角弘海産
781-5241 高知県香南市吉川町吉原1679 電話|0887-55-1218 FAX|0887-55-3900
営業時間|10:00-14:00 ちりめん丼セルフ販売(準備中)|土曜日のみ 11:00-14:00
定休日|日曜日、その他(年末年始、お盆休み、休漁日など)
ネットショップ|tosakakuhirokaisan.com(10月初旬オープン)