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土佐の嶺北、美しすぎる棚田たち① 序説

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2015.6.26 

土佐の食文化『ぬた』―本物の味・家庭の味を全国に。異業種から参入した若手の葉にんにく農家が生み出した絶品調味料

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「ぬた」とは?

高知県独特の調味料、「ぬた」。
伝統野菜である葉にんにくをすりつぶして酢みそや砂糖と混ぜ合わせたタレのことで、甘辛く酸味のある味わいと風味が特徴。作り手によって配合具合や使う素材が異なり、家庭の味としても親しまれています。

「葉にんにくのたれ」が生まれるまで

この「ぬた」で起業し、商品化に成功した「株式会社アースエイド」は、
須崎市中心部から車で20分ほどのところにある浦ノ内西分地区にあります。
社長の嶋崎裕也さんは兵庫県出身ですが、2009年末にこの地に移住しました。
転機は2007年。須崎市の父親の実家を訪れたときに口にした「ぬた」のおいしさに衝撃を受け、
「全国にこのおいしさを届けたい!」と起業することを決意しました。

その当時、葉にんにく農家が非常に少なかったことや耕作放棄地を自ら借りるなど、
すべてのことが手探り状態からのスタート。
まずは栽培に最も適した品種を探し求め駆け回り、手に入れた品種の育成状態を確かめながら
使用する種を絞り込みました。

葉にんにくのタレ 畑

そして味の良さにこだわるため、無農薬の完全有機栽培の葉にんにくが作れる環境の整備を行いました。
防草シートの張り方や芽が出るスリットの入れ方までひとつひとつが模索の連続。
地域の方の協力とこうした努力の甲斐があり、現在では須崎市で2例しかない有機JAS認定を受けています。

葉にんにくのタレ 畑の風景

葉にんにくは収穫後のスピードが品質を左右する難しい野菜です。
気温の低い時間帯に収穫し、洗浄、5分以内に冷凍庫に入れる、という徹底した管理と独自の冷凍技術を開発することにより、高品質の葉にんにくを1年中安定的に供給できるようになりました。

充填作業全体

構想から5年、こうした努力が実り2012年に創業。
栽培から加工までを一貫して手掛け、合成保存料や合成着色料などを使用しない
「葉にんにくのたれ」という商品が誕生しました。
完成後、様々なメディアに取り上げられ続け、大きな注目を浴びています。

葉にんにくのタレ
葉にんにくのたれ(和風白味噌・和風麦味噌・ジェノベーゼ風ソース)
平成26年度 第29回 高知県地場産業大賞 奨励賞受賞

「ぬた」とともに語られる社長の素顔

嶋崎さんの人柄は商品以上に語られることの方が多いかもしれません。
人の懐に入るのが上手い、というのか、人の心を即座に掴むような印象があります。
「関西人だからでしょうね。人に対してバリアがないんですよ。」
と一言、二言。そのあとに出てくるのは、自身が出会った人たちのことばかり。
「誰々さんはこういうところがすごい、真似できない、素晴らしい…」
そんなお話を聞かせてもらい感じたことは、人の良いところを見つけるプロ。
人のことをよく見ています。

嶋崎さんがこれまでに出会ってきた人たちの共通点は『おもてなしの心』
「いかに楽しんでもらうか、喜んでもらうか、という考えはお客様からの期待やお客様目線のもの、
それは利他の心に通じる、と考えている。」とお話ししてくれました。
そして、この考え方は自身の経営方針にも反映されています。

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子どもの頃からの夢だった自動車メーカーのエンジニアから6次産業を扱う個人事業主へ。
その道のりは決して順風満帆ではなく、苦労の連続でした。
そんな最中、彼を助けてくれたのは昔からの友人、自動車メーカーの同期、地域の方々。
面白い人たちと連鎖的につながりが生まれ、作り上げた商品は瞬く間に広く知れ渡ることになりました。

「サラリーマン時代と比べて、働いている時間は圧倒的に長くなっていますし、生活も安定しない。
命がかかっています。でも過去にはなかった人とのつながりができ、
人生の幸福度は今の方が高いです。あとは好きなことをやっているからでしょうね。」

お話の中でよく出される“人”という言葉。
これは嶋崎さんを表すキーワードのひとつのように思えます。
とにかく10分でも20分でも時間があれば人に会いに行く、人と会うことを惜しまないのです。
表面だけに出る情報ではなく、現場を知ること。
人のためのサービス、商品を提供したいと考えているからこそ、人と連携する。心を通い合わせる。
これが基本的な理念だからです。
そんな彼の人柄に惹かれる人たちが年を重ねるごとに増えていき、商品と同様にその名前が知られるようになってきました。

商品から紡ぎだされる想い

ベンチャー企業として歩み始めて2年弱。社長という言葉の響きだけを聞くと、
どしんと構えたイメージが浮かびますが嶋崎さんは違います。
社長は“究極の雑用係”というほど、営業から加工作業まで補完的な仕事を請け負っているのです。

休みもなく走り回る嶋崎さんを支えるものは「食」。
サラリーマン時代はコンビニ弁当などで済ませていた生活が変わったのは、食に関わる仕事をはじめてから。
「心身ともに健康で過ごすこと、身体が資本です。」
なぜ商品にこだわるのか―それは良いものを食べれば元気になることを自身の経験から学んだのです。
そして、その価値に見合った対価を支払うことが大切だ、と知りました。

だからこそ自社商品は誠心誠意、細部に至るまで向き合っていたのです。

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もう1つ、嶋崎さんを支えているものは揺るがない「信念」。
今、置かれている環境で頑張ること、最大限のパフォーマンスを目指すことに尽きる。
それはすなわち「この場所でやる、と覚悟を決めている」ということです。

たった1人から始まった小さな一歩は、強い情熱とこれまでエンジニアとして培った
論理的な思考とものづくりの視点、出会った方々との縁によって、新たな展開へと大きく進みはじめています。
手間暇かけてひとつずつ作られる「葉にんにくのぬた」は、
従来の「刺身だけのもの」という固定概念を打ち消す様々な食べ方を提案し、各地から反響をよびました。
最近では、生の葉にんにく自体の知名度、認知度を上げるための取り組みにも着手しており、
素材そのものの良さを全国に発信しています。

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(使用例:ぬたしゃぶ)

mugimiso
(使用例:手前・グリルした肉に添えて/奥・刺身)

seika
(青果として出荷される葉にんにく)

帰り際に嶋崎さんはポツリとこんな言葉をつぶやきました。
「私は、起業するまでに沢山の人にお世話になりました。身近で起業したい、
という人がいればノウハウや情報も惜しみなく伝えてサポートをしたいと考えています。
それが自分の『恩送り』というか、これからの人生の生き甲斐に繋がると考えています。」
“人を大切にしているからこそ、人に大切にされる”
商品に映し出される人柄はこれからもますます沢山の人たちを惹きつけていくのだろう、
そう思わずにはいられませんでした。



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