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《愛媛》厳冬の氷瀑と猪出汁のおでん

《愛媛》内子町で200年続く職人技、和ろうそくのつくりかた[大森和蝋燭屋]

2015.2.23 

伊予市郡中の味自慢。愛媛の味を支える、ムロアジ削り節の現場を訪ねてみた。

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agri

いきなり紹介、伊予市流ねこまんまはこれ!

あつあつの炊きたてごはんの上に削り節をひと掴み。
踊る削り節の上にぽとりと卵を落とし、醤油をたらして七味をふりかけ、ぐるぐる混ぜたら、後は「いただきます!」。
一枚目の写真は、愛媛県伊予市流のねこまんま。
この削り節がかつおではなく、ムロアジというのがミソなのです。

伊予が生んだ花かつお

出汁をとったり、冷や奴にのっけたり、一般の家庭に常備されている削り節といえば、かつお節。「花かつお」とも呼ばれますが、実はこの名付け親は、伊予市出身の岡部仁佐衛門氏。海産物商を営み、従来の削り節機を改良して削り節産業を発展させ、大正から昭和にかけて、全国に「郡中花かつお」の名を轟かせた人物です。
現在は、花かつおといえば、カツオやソウダカツオが原料ですが、当時は、宇和海や九州のアジ、サバ、イワシなどが多く、それらの削り節も花かつおと呼ばれていました。同じ削り節でも魚の種類が違えばまったくの別物。ムロアジの削り節は、かつお節よりも色白で、アジ独特の風味や旨味が感じられ、出汁をとればまろやかでさっぱりとしているのが特徴と言われています。

ムロアジの削り節。

ムロアジの削り節。

伊予灘の風と光にさらされて

港町として栄えた伊予市郡中地区には、大手削り節メーカーの他に、天日干しや手作業が残る製法を今も続ける名店が今も存在します。それが、相原海産物店。創業者は、先述した岡部仁佐衛門氏の親戚にあたる方です。かつおの他に、ムロアジやサバ、イワシを削っています。地元では、「相原さんのところの削り節やないと」という根強いファンの声が聞かれます。

からっと晴れた青空の下、加工場にお邪魔すると、2階の高さのスペース一面にムロアジが敷き詰められていました。この日広げられたムロアジは合計で75キロ。伊予灘から吹き抜ける風と太陽の光にさらされることによって、臭みが抜け、旨味を増していきます。郡中でも室内で乾燥させる工場が多い中、天日干しは珍しい光景です。

熊本県天草市の水産会社から仕入れている原料のムロアジ節。手作業で2つに割り、骨を取り除いた後、天日干し。カラスや猫が狙うため、普段は、網をかけている。

熊本県天草市の水産会社から仕入れている原料のムロアジ節。手作業で2つに割り、骨を取り除いた後、天日干し。カラスや猫が狙うため、普段は、網をかけている。

魚の状態を見ながら、1日から2日かけて干すため、天候に左右される作業。相原海産物店2代目の相原克俊さんによると「乾きすぎても駄目だし、材料の状態や温度と湿度によって変わるので、見極める感覚が大事」なのだそうです。天日干しが終わったら、削る直前にセイロに入れ、練炭の熱でじんわりと炙った後に、いよいよ削りに入ります。

セイロ。下の七輪の練炭の熱で炙る。削りにちょうどよい堅さに調整。

セイロ。下の七輪の練炭の熱で炙る。削りにちょうどよい堅さに調整。

100分の1ミリにこだわる「削り」

4台の削り機が並ぶ削りの作業場。ちょうどこの日は、ムロアジとサバを削っているところでした。上部に投入口があり、そこに魚を投入すると、両サイドで回っている円盤に付いているカンナの刃で削られていき、しゅるしゅると白い帯状の削り節が下のコンテナに集まっていきます。この削りたてを口に含んだ時の香りと味わいは絶品です。

手が添えられている2カ所の穴が投入口。円盤に取り付けられているカンナの刃で削られる。

手が添えられている2カ所の穴が投入口。円盤に取り付けられているカンナの刃で削られる。

削りたては、ふわふわと軽やか。

削りたては、ふわふわと軽やか。

創業当時から稼働している削り機ですが、その刃の調整は、100分の1ミリの世界。毎日、魚の種類や状態、薄削りなのか厚削りなのか、その日のコンディションなどに合わせて、刃の出具合が調整されます。削り具合が味に影響するので、ここは長年の経験が要求されるところ。「30年ほど続けていますが、まだまだ未熟なんですよ」という相原さんの言葉から、その微妙な加減の難しさが伺い知れます。

円盤についているカンナの刃。これを日々調整している。

円盤についているカンナの刃。これを日々調整している。

削った後は、そのまま単品で袋詰めして出荷することもあれば、他の削り節とブレンドすることも。実は、海産物屋だけではなく、県内の蕎麦屋やうどん屋などの各店こだわりのブレンドにも対応しているので、ムロアジの削り節に記憶はなくても、どこかで、味わったことはあるかもしれません。控えめですがしっかりと、愛媛の味を支えています。

重さの感覚が身についていて、慣れた手つきで、あっという間に袋詰め。

重さの感覚が身についていて、慣れた手つきで、あっという間に袋詰め。

丸にアのロゴが目印。

丸にアのロゴが目印。

本当に美味しいものを残したい

世界一固くて、薄い食べものと称される削り節。その工程はシンプルですが「単純がいちばん深い」と語る相原さん。品質の良し悪しを最も左右するのは、やはり素材になります。ところが、年々、良質のムロアジの捕れる量が減ってきていることが、悩ましいところです。

ムロアジを手にする相原克俊さん。相原海産物店の2代目。

ムロアジを手にする相原克俊さん。相原海産物店の2代目。

「本当に美味しいものが、いつの間にかひっそりとなくなっている。昔は、この地域でも美味しいカワハギのみりん干しや干しエビなどがあったのですが、残念ながら、今ではなくなってしまったものが結構ありますね」。そんなふうにローカルな美味いものに思いを馳せながら、今日も素材と向き合い、郡中そして愛媛の味を守り続ける相原さんなのでした。

相原海産物店の店舗。ムロアジの削り節をはじめ、かつお節やたれいわし節、いりこや干物なども販売している。伊予市内外からお客さんが買い求めに訪れる。

相原海産物店の店舗。ムロアジの削り節をはじめ、かつお節やたれいわし節、いりこや干物なども販売している。伊予市内外からお客さんが買い求めに訪れる。

ムロアジの削り節は、漬物と和えて食べるのもお勧め。ご贔屓にしたい味です。

ムロアジの削り節は、漬物と和えて食べるのもお勧め。ご贔屓にしたい味です。

相原海産物店

〒799-3114愛媛県伊予市灘町12-5
TEL 089-982-0505
営業時間 7:30〜19:00
日曜定休

愛媛県伊予市灘町12-5


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