全国でウツボを食べる文化がある県は数少ないと聞くが、徳島県牟岐町の東漁港では、冬の風物詩である「ウツボの天日干し」が始まった。そう。冬の到来ということである。
風が冷たく寒さが厳しくなってきた平日午前10時頃。ウツボ漁の大ベテラン、木村的(きむらひとし)さんが、本日の朝、漁に出かけて獲ってきたウツボを捌くためにどこからともなくやってきた。
本日捕れたてのウツボたち。まだ生きているかのような艶があり非常に綺麗である。
「食べると精がつく」と言われているほどのウツボは、非常に生命力が強いらしく、この写真のように一度塩漬けにして弱らせるといいとのこと。またヌメリを持っている魚なので、ヌメリを取るためにも漬けるらしい。
しかしとにかくよく喋る木村さん。いろんな情報を聞かせてくれて、こちらが質問しなくてもどんどん面白い話が飛び出してくる。にも関わらず非常に手際よくウツボを捌いているから素晴らしい。30年ウツボ漁をしているだけのことはある。
ビックリするほど非常に綺麗な身をしているウツボ。背開きにしているため、一見ウナギに見えなくもないが、ゴムボートのような弾力を持った皮はウツボ以外のなにものでもない。
これはたわしを使ってヌメリを取っているところ。捌く時間は一尾につき3分程度だろうか。ものすごいスピードで捌かれていく。もちろんその間の会話のスピードも情報量も半端ではない。
本日穫れたウツボは十尾程度だっただろうか。それを全て捌き終わったら木村さんの倉庫へ。倉庫には前日穫れたウツボが部屋の中で干してあった。クロスされた木は竹で出来たもの。手作りである。身が閉じずに綺麗に干物にするためにやる必要があるんだとか。
そして本日木村さんの手によって捌かれたウツボたちは天日干しにされる。
一尾一尾丁寧に干されていく。冷たい潮風と天日で干されるウツボ。
黙々と作業を続ける木村さん。
なんだかほっこりする絵である。
少し小さなサイズのウツボは金網で干される。黄金色の皮と青空がなんともマッチしている。
牟岐町は漁師町。港にはたくさんの猫がいる。ウツボをうっかり低い位置で干してしまうとたまに猫に取られるんだとか。しかしそんなことを話す木村さんの顔からは笑顔がこぼれている。
漁師さんが魚をあげるからどこに行っても猫だらけ。でも全くなつかないんだとか。
全身で太陽の光を浴びている猫も…
漁港を回ると他の場所にもウツボがたくさん干されている。木村さん以外の漁師さんもウツボを獲る人は、牟岐にはたくさんいるということである。
こちらでも天日干しの真っ最中。
牟岐町のウツボ漁は冬頃から始まり2月の末まで。もしウツボを食べたことがない、食べてみたいと感じた方はぜひ一度食べてみるといい。干物も美味いが、プリっとした身は焼いても鍋に入れても最高に美味いし、コラーゲンたっぷりのプルプルとした皮も最高に美味い。是非一度ご賞味あれ。
中学生に書いてもらったウツボの絵が可愛らしい木村さんの倉庫のポップ。
そして明日も明後日も、木村さんのウツボ漁は続くのである。