築125年のうだつの残る古民家に、野菜と雑貨が並ぶ
徳島県にはうだつの残る町並みが3カ所あり、その中で一番有名なのは美馬市脇町のうだつの町並みだ。
脇町を中心とした吉野川流域は江戸から明治にかけて日本最大の藍作地帯で、脇町は周辺地域で産出される藍の集積と吉野川の水運を生かすことにより繁栄し、富の象徴であったうだつの上がった立派な商家が軒を連ねた。藍の生産が海外に移り産業として衰退してしまった現在でも、その名残はうだつの町並みに感じさせられる。
うだつとは屋根に付けられた防火壁のこと。富の象徴とされた。
その町並みの入口に近い築125年の古民家を改装したお店が「産直と道具と喫茶 フナトト」。
フナトトという不思議な響きは店主の田村圭介さんの実家の屋号と店が川に近いことから名付けられた。元々は金融業をしていたというこの古民家は、うだつは勿論、虫籠窓や本瓦が残っており重厚感ある外観だが、店内に入ると天井が高く意外な開放感があった。
外観は当時のまま。脇町は国の重要伝統的建造物群保存地区に指定され規制があるため、大きな看板は無い。
約90平米の広い店舗は、産直、雑貨、喫茶の3つのスペースに分かれている。
産直コーナーには地元周辺の有機・無農薬の季節の野菜が並ぶ。ハチミツや米、味噌、ゆず酢など地域の産品もあり、特に手作りの丸いこんにゃくは観光客にも人気だそうだ。
徳島市のaalto coffeeの珈琲豆やvegifullの野草茶など店主の気に入ったこだわりの商品もさりげなく一緒に並んでいる。
産直コーナーの奥にある雑貨コーナーでは、徳島県内ではなかなか見かけることの無い商品が並んでいる。人の繋がりをコンセプトに、知り合いの作家のものが中心。
靴下や帽子、マフラー、バッグなどアパレルにも力を入れている。
藍で栄えた脇町らしい商品として、藍染作家のbuaisou.のバッグやアクセサリーも。
また、藍を食料品として取り入れた商品が店頭に並んでいて、目を引いていた。藍の手延べ麺、藍ノ葉茶、藍チャイなどだ。藍の葉はデトックス作用、殺菌作用があり、昔は漢方として使われていたそうだ。
地元に戻って思ったことを形にした結果が、人の集まる場所作りだった
中庭が見える一番奥が喫茶スペースだ。珈琲、季節のフルーツのドリンク類と、パスタ、ビスケット等のメニューは全てテイクアウトも可能だが、店内の本棚にはこだわりある本がセレクトされ自由に閲覧できるので、飲み物片手にゆっくり過ごすのもいいだろう。
店主の田村さんは美馬市の隣の東みよし町出身で、10年程関西のアパレル店舗で働いていた。3年前に実家のイチゴ農家を手伝うためにUターンしてきたが、田舎では若い人が集まる場所が少なく、そういう場が欲しいと思っていたそうだ。2年前、丹波篠山で行われているササヤマルシェに自社のイチゴジャムを販売に行った時、たまたま知り合った人にこの物件を紹介された。高校時代に通ったこの地に、店舗を開けることを決めるには時間はかからなかった。
イチゴ農家の仕事も続けながらフナトトを立ち上げ、二足のわらじを履くことになった田村さん。アパレルで働いた経験から、色んな世代の人が訪れるフナトトでも積極的に対話している。「ここを人が集まり、何かが始まる拠点にしていきたい。人が出会えるような仕掛けも考えていきたい。」と、様々なイベント企画を温めているそうだ。
フナトト
徳島県美馬市脇町大字脇町156
050-3433-8411
定休日 火曜日
営業時間 9:30〜18:00
Facebook https://www.facebook.com/funatoto