夜のとばりが降り始めると店に温かい灯がともり「欧風食堂 カンペシーノ」がオープンします。
賑やかな中心街から少し離れた電車通り沿いの店には、
テーブル席が3つとカウンター席が数席だけ用意されています。
通りに面した外壁と店内の床材には大豊町産の杉を使用しており、
お客様に愛された月日とともに深い色へと味わいを増していきます。
入口の扉を開けて中へ進み、まず目に飛び込んでくるのはスッキリと整えられたオープンキッチン。
シェフがキッチンで調理している様子が手に取るように伝わってきます。
オープンキッチンにした1つ目の理由は店の広さを最大限に活かすため。
もう1つの理由は、修行時代は傍にあった師匠の目に代わってお客様に見てもらい、妥協できない環境をつくる為でもありました。
お皿の上に盛り付けられる料理は、高知の食材を使ったものが中心です。
野菜と果物は、大豊町に住む奥様のご両親が仕事の合間に育ててくれたものや産直市で仕入れたもの。
旬のものしかないし、旬だから美味しい。
季節とともに変化する「野菜マリネ盛合せ」は、店の人気メニューです。
7種類の野菜マリネは鮮やかな色合いが見て楽しく、
それぞれが違った味付けと歯ごたえで食べて嬉しい一皿です。
「高知の人ってサバが好きですよね」シェフにそう言われて、思いを巡らし、
そして確かにそうだと思い至りました。
高知に生まれ育って36年、無意識の内に自然とサバを好んで食べてきたこれまでの人生。
皿鉢料理をはじめ、宴会の席でサバ寿司を食べる機会のなんと多いことか。
高知県人にサバ好きという意識はあるのだろうか・・・走馬灯のようにこれまでの人生を振り返っている内に目の前に運ばれてきたのは「サバとじゃがいものテリーヌ」でした。
涼しげなガラス皿に盛り付けられたテリーヌは息をのむ美しさ。
ヨーグルトを使った純白のソースは淡い酸味で優しいアクセントになってくれます。
じゃがいもの層にはさまれてサバが泳ぐテリーヌ。
隣の席で先に箸を付けた友達が無言で私をパシパシたたき、
喜び溢れたまなざしで絞り出した一言が「これ、美味しい」でした。
その美味しさに満たされたまま箸を置けるちょうどの量、お見事です。
私の中のサバに対する意識を確実に変えてくれた一品。
これからはサバ好きを公言して生きていきたいと思います。
「土佐あかうしのステーキフリット」は是非注文したい一品です。
土佐あかうしは、年間出荷量の少なさから“幻の牛”とも言われています。
もも肉(ランプ)を仕入れ、約1ヵ月熟成させて旨味と肉の軟らかさを引き出します。
肉を焼き上げる時の香ばしい香りが店内に広がって食欲が刺激され、
目の前に運ばれて来た時に美味しさを確信、
ミディアムの焼き加減で仕上げられたステーキを噛む程に旨味と喜びが体にしみ渡っていきます。
添えられているジャガイモも絶品で、ファンがいるというのも頷けます。
あかうしのステーキとじゃがいものフリットとマスタード。
一枚のお皿の上でとられている完璧なバランス。
しかしシェフに言わせれば、まだ美味しくなる可能性を探っているのだそう。
素材さえ良ければいいっていうのはこだわりじゃない、
良い素材を仕入れて最終的にどう持って行けばいいかを考えて調理します。
素材の状態・特徴、どんな風に組み合わせるか、熱を加えるタイミング、香りの立ち方・・・感覚で覚えているような足したり引いたり微妙なかけ引きをして、導き出した答えがお皿の上に乗せられる訳です。
素材の持ち味を引き出すことに重きがあり、複雑な調味料を使ってる訳ではありません。
お皿の上の答えは至ってシンプル、だからこそピンポイントで訴えかけてくる力が強い。
料理を頂いてると甘味、塩味、苦味、酸味、旨味、全ての味覚を総動員して味わっているような感覚を覚えます。
そして、料理とともに健やかなワインはいかがでしょう。
高知では珍しく、自然派ワインを中心とした品揃えです。
奥様が丁寧に選ばれたワインは料理との相性もよく体にも優しいものばかりで、
食事の時間をさらに豊かにしてくれます。
「料理は食べてしまえばなくなってしまう、
だからこそ記憶に残る料理を作りたい」
カンペシーノの料理を味わえばその記憶に刺激され、また今夜も足を運んでしまいます。
【コース料理をご希望の方へ】
2名様以上・2日前までにご予約を。デザートを含む5皿にコーヒーが付いて3800円から相談に乗って下さいます。
欧風食堂 カンペシーノ
高知市城見町6-21
088-855-7751
18:00~23:00(L.O.22:00)
月曜日・第3火曜日定休
ブログ http://campesino.blog90.fc2.com/
(都合により定休日が変更になることもありますので、ブログでのご確認と事前のご予約をお勧めします。)