「風景をつくるごはん」とは?
田舎に遊びに行くと、何段にも重なる棚田や段畑の風景を見て、昔の人の努力を感じたり、どこまでも広がる田んぼの風景を見てその土地の豊かさを感じたりします。みかんや柚子などの柑橘類の畑では、黄色い実がたわわになる木に思わずカメラを向けるなんてこともあります。
あるいは、家の密集した道の細い漁村をわくわくしながら探訪し、それに続く漁港で漁船が係留されている様子や、浜辺や道端で海草や魚が干されている様子を楽しんだりもします。目的地ではなくても、道中の車窓からそういった風景を楽しむこともあります。
こうした風景は、すべて、そこに住む人たちの生活の姿です。農村や漁村で人々が農業や漁業をしているからこそ、存在している風景だといえます。しかしながら、よく知られているように、日本の田舎は、過疎化や高齢化が進んでいます。若者が田舎から出て行く要因は、「田舎には仕事がないから。農業は労働の割に儲からないから。」と言われます。日本の田舎で、農業や漁業に従事する人たちがいなくなったら、私たちが楽しんでいる田んぼや畑、漁村の風景もいずれ消えてしまいます。
そこで、こうした風景をいつまでも楽しめるように応援しよう!と考えました。農業や漁業を手伝いに行くのは難しいですが、普段食べるものの産地を少し気にして、日本の田舎を応援することならできるのではないか。応援したい地域の食材を積極的に食べるという取り組みをしよう、という考えです。自分のごはんが、まわりまわって田舎の風景をつくっている、という意味を込めて「風景をつくるごはん」と名付けました。
「風景をつくるごはん」のルール
わたしは徳島に住んでいるので、なるべく徳島産のものを食べるようにしています。
それを基本に、つぎのようなルールをゆるく決めています。
1.基本は徳島県内産の食材
2.選べるときはなるべく過疎地のもの
3.出来るだけ産直市で購入
4.調味料など難しい場合は四国内
5.旅行先で買ったものはOK(むしろ積極的に)
6.それ以外は、無農薬、有機栽培のもの(地力を落とさない)
わかりにくそうなものについて少し説明すると、3の「出来るだけ産直市で」というのは、産直市で売られているものは生産者が自ら値段をつけたものだからです。5の「旅行先で買ったものはOK」というのは、旅先で風景を楽しんだら、そのお礼として産直市などで「その土地の風景をつくる食材」を買おうという気持ちです。また、6の「それ以外は、無農薬、有機栽培のもの」ですが、たとえば日本ではなかなか栽培されないスパイスなどがそれです。身近な場所のものが買えないのであれば、せめて生産地の地力を落とさないよう配慮されているものを選びたいと思っています。
お肉、乳製品、卵はほとんど使わない
日々のごはんを見てもらえば分かるのですが、お肉、乳製品、卵はほとんど使っていません。これはマクロビオティックをゆるく目指しているというのが大きな理由ですが、その他に、摂取カロリーの内訳をそれらの食材ではなく豆や野菜にすることで、田んぼや畑で採れるものをたくさん消費したいという思いもあります。また、お肉のための牛や豚、鶏、乳牛、卵を産む鶏の飼料のほとんどを、今のところ輸入に頼っていること、飼料の産地で地下水の過剰なくみ上げによる環境問題などが起こっていることが、動物性のものをなるべく使わないようにしているもうひとつの理由です。食べているものが明確になっている家畜は、まだ少ないのが現状です。
調理が簡単である、一度に使う食材の数が少ないという特徴も
普段、外食やコンビニのご飯で済ませている人は、忙しいからご飯を作ることが出来ない、毎日料理しないから冷蔵庫に食材が余る、という人も多いと思います。そんな人にも、田舎の野菜を日々、食べてもらいたくて、簡単なごはん、単発で料理しても買った食材を余らせないようなごはんを心がけています。
とはいえ、これは働いている私が作りやすいご飯をつくっていたら、いつのまにかこうなっただけなんですけどね。
「風景をつくるごはん」の願うこと
このコーナーでは、私が日々食べている「風景をつくるごはん」を紹介していこうと思います。作り方や食材にまつわるエピソードなんかも盛り込んでいきたいと考えています。
「風景をつくるごはん」を見て、四国の野菜や魚をごはんにする人が増えて、四国の田舎の風景がいつまでも生き生きと輝く、というのが最終的な目標です。