徳島県西部の土産物店やスーパーで見かける、わっか型でピンクと青のポイントの入ったクッキーのようなお菓子。
それがおいのこ菓子だ。
食べてみると、意外な食感。もそもそっとしている。現代的なお菓子に慣れていると、あまりおいしく感じないかもしれないが、じんわりと甘さが口に広がり子供のときを思い出す。
おいのこ菓子は、「お亥の子」という旧暦の10月の亥の日にあった収穫祭に由来がある。この「お亥の子」では、子どもが稲藁の輪っかを持って家々を訪ねて回り無病息災を祈り、お礼においのこ菓子やみかんをあげる風習だった。日本版ハロウィンのようなものだろうか。現代ではこのお祭りは、徳島県西部ではなくなってしまった。
昔はたくさんあったというおいのこ菓子の製造所は、今では高齢化でほとんど数軒を残すのみとなった。今もおいのこ菓子の製造をしている徳島県三好市井川町の「島尾菓子店」を訪ねた。おいのこ菓子は材料の小麦粉や黒糖を練って、重ねて伸ばして、切って、オーブンで焼くだけ。作り方は昔からなにも変わらないそうで、すべて手作りだった。焼きたてのおいのこ菓子は、普段よりもっと柔らかくふにゃふにゃっとしていた。