須崎市と言えば『鍋焼きラーメン』
そんな言葉が今ではすっかり定着した地元ならではのB級グルメです。
半世紀以上にわたって須崎市で愛される、日本一熱いラーメンをご紹介します。
『鍋焼きラーメン』は昭和20年代に須崎の路地裏にあった谷口食堂(現在は閉店)が発祥。
現在の50代半ばの人たちが子どもだった頃、鍋焼きラーメンは暮らしの中に息づく食べ物でした。
蘇った地元の味・鍋焼きラーメン
時は経ち、のちに鍋焼きラーメンが全国に知れ渡る大きな転機となったのは平成14年。
よさこい高知国体を契機に、高速道路の高知自動車道が伊野ICから須崎東ICまで延伸することになりました。
目玉もインパクトもない須崎市は、このままだと素通りされる街になってしまう―そんな危機感が一部の地域住民を奮い立たせ『鍋焼きラーメン プロジェクトX』が発足。
平成23年にはB-1グランプリの全国大会に出場したことも後押しとなり、年を追うごとに知名度や認知度は徐々に広がっていきました。
そして数年のうちに須崎市の名物として県内外から観光客を呼び寄せる大きな起爆剤となったのです。
現在、鍋焼きラーメンは須崎市内で30店舗を超える店舗で提供されており、須崎駅近くの「すさき駅前食堂」も人気店のひとつ。
店内はレトロなポスターが沢山貼られていて、懐かしい歌謡曲が流れるノスタルジックな空間です。入口からまっすぐ前に見えるのは“鍋焼きラーメンの「7つの定義」”の看板です。
1.スープは、親鳥の鶏がらの醤油ベースであること。
2.麺は、細麺ストレートで少し硬めに提供されること。
3.具は、親鳥の肉、ねぎ、生卵、ちくわ、すまきなどであること。
4.器は、土鍋もしくはホーロー、鉄鍋であること。
5.スープが沸騰した状態で提供されること。
6.タクワンの古漬けで酸味があるものが提供されること。
7.全てにおもてなしの心を込めること。
これらの条件を満たしたものが、鍋焼きラーメンと呼ばれています。
提供店舗によってスープの味は個性豊か。
「すさき駅前食堂」では野菜をふんだんに使用しているのが特徴です。
鍋焼きラーメンの楽しみ方
ふたを開けると真っ白な湯気がもわっと立ちのぼります。
ちくわ、ネギ、生卵、コリコリとした食感の親鳥(鶏肉)というシンプルな具材ですが、ぐつぐつ煮立ったスープの香りが漂えばゴクッと生唾を飲んでしまうほど。
卵をつぶさないように、そっとレンゲを沈めてひとすくい。
黄金色のスープを口に運べば、じわっと広がる旨みと塩気、ほんのりと感じる甘み。
あっさりしていますが、コクのある旨みが凝縮されたシンプルな鶏ガラ醤油はクセになる味わいです。
鍋焼きラーメンの主な食べ方は3通り。
<卵くずし派> 卵をすぐに崩してスープに溶かす
<卵最後派> 卵をスープに沈めて後で食べる
<すき焼き風> 鍋のふたに卵の黄身を出し、溶いて麺をつける
スープの味をまろやかにして味わうなら、卵崩し。
スープの味をしっかりと楽しみたいなら、すき焼き風か卵最後。
そのときの気分によって味わい方を変えることもできます。麺を食べ終わった後、残ったスープにご飯をいれて雑炊風にして食べる方も少なくありません。
忘れてはいけないのが、こちらのタクワン。
ほどよい酸味が鍋焼きラーメンの箸休めとして、いい仕事をしてくれます。
またラーメンにかけるスパイスも胡椒、七味唐辛子、一味唐辛子など好みは人それぞれ。
鍋焼きラーメンには自分流の食べ方を持っている人が多いようです。
鍋焼きラーメンが土鍋で提供される理由
なぜ土鍋で提供されているのか、疑問に思った方もいるでしょう。
谷口食堂がまだ営業していた頃、出前を頼んだお客さんに熱々の状態で食べてほしい、という思いからホーロー鍋を使用していたことが由来しています(近年は土鍋に変化)。
さらに食べるときにちょうどよい麺の柔らかさになるように、ストレートの細麺を固めに茹でていたと言われています。
実はこの鍋焼きラーメンはお客様のことを考えた末に生み出された提供方法だったのです。
まさにこれは鍋焼きラーメンの定義の7つ目『全てにおもてなしの心を込めること』
この想いが谷口食堂の閉店から30年以上経った今もなお、須崎の町中に受け継がれているのです。
■取材店舗の紹介
すさき駅前食堂
〒785-0001 高知県須崎市原町1丁目5−20
TEL:0889-40-4433
営業時間:午前10時~午後4時
定休日:水曜日/駐車場あり
FBページ:https://www.facebook.com/susaki.ekimae/