ソウルフードパラダイス・高知県宿毛市
「やどげ」じゃないです。「すくも」と読みます。
高知県西南に位置する宿毛市。
海釣りが一年中楽しめることから釣り好きから人気の町で、食べ物なら「小夏」や「きびなご」などが有名です。
でも、私は気がついちゃったんですよね。宿毛市ってソウルフードが多くね?って。
観光客を意識して特産品をバーンと使った料理ではなく、どこででも食べられそうな一般的な料理。
でも、その料理を出す店は宿毛の町に何十年も前からあって、その店のオリジナリティが爆走気味。
「この店の味は他では食べられないな」という真のソウルフードが幅を利かせているんです。
私は宿毛が地元というわけではないのですが、敬愛の念を込めてレポートさせていただきます!
牛か、豚か。
その店は中村宿毛道路を降りてすぐのところにあります。
天下茶屋、宿毛で知らない人はいないであろう名店です。
昼時ともなれば平日でも満席に。ネクタイを締めたビジネスマン、作業着に身を包んだガテン系、事務員風の女性、さらに子供からお年寄りまでいる家族連れなどありとあらゆる人が訪れます。
店内は小上がり式のお座敷になっておりテーブルには鉄板が設置。
まるでお好み焼き屋さんのようですが、ここで楽しめるのは焼き肉オンリーです。
席に着くとさっそく店員さんから「どうしましょう?」と聞かれます。カルビだの、ロースだの、タン塩だの、ややこしいメニューはここにはありません。選択肢は二つのみ。豚か牛か、それだけです。このスタイルに慣れている地元の人は「牛2とご飯大盛り」「豚1とご飯小」などすぐに注文。
ちなみに「1」とか「2」の数字はボリュームを表します。「牛2」とはつまり「牛肉の焼き肉を2人前」という意味です。
ペットボトルで出される冷たいお茶を飲みながら待っていると、ほどなくして店員さんが鍋を持って近づいてきます。いよいよ宿毛のソウルフードの降臨です…!
鉄板の上でジュージューと音を立て、湯気を昇らせているそれは堂々たる風格。「えっ?野菜炒めでしょ?」なんて野暮なことは言いっこなしです。これぞ宿毛で50年愛されている焼き肉です!
なにがうまいって、食感がうまい!タレがうまい!
現在のご店主のお母さんが生みだしたこの焼き肉は、およそ50年前の創業時から店にあるメニューです。当初はタンやハート(心臓)など一般的なお肉もメニューにあったそうですが、狂牛病騒動などの影響で国産肉の価格が高騰したことからメニューから消えていったとか。お母さんは国産肉にこだわる方だったんですね。
厨房の中ではご店主が熱い鉄板を前に次々と入る注文をこなしています。まずは肉をよく炒めて、モヤシ、ニラ、キャベツの順に加えながらさらに炒め、火が通ったらできあがり。鍋に入れてすぐにお客さんのもとへ運ばれます。
天下茶屋の焼き肉を語る上で外せないのがタレです。これがうまい!クセになる!焼き肉を箸でガッと掴んだらタレにどっぷりと浸し、したたるタレをお茶碗のご飯でキャッチしながら口に運ぶ・・・幸せすぎて「もうこのまま宿毛市民になってしまおう」とさえ思いますね。
このタレは愛媛県で作られた甘めの醤油がベース。初代のお母さんが生みだしたレシピを守り、ご店主夫婦の娘さん(つまり3代目)が手作りしているそうです。タレのコクっとした甘さは、肉の香ばしさや野菜のうま味と超絶マッチ!そして、お店こだわりの白ご飯ともめちゃくちゃ合う!無心になって箸がご飯を求めます!! お好みで生ニンニクのすりおろしと一味唐辛子を加えると、さらに食欲増進です。
そして、歯ざわりを残した野菜の食感も絶妙!これは強火で一気に炒めるから出せる食感だと思います。毎日、何時間も熱い鉄板の前でがんばるご店主に感謝です!
天下茶屋のタレは販売されており、宿毛市が推奨するお土産品にもなっています。自宅のホットプレートで作れるレシピも公開されているのですが、やっぱり家じゃアノおいしさが完全再現できないんです。火加減とか色々違いがあるんでしょうね(でも、やっぱりうまいので必ずタレは買って帰るけど)。高知市から宿毛市までは車で3時間ぐらいかかるのですが、何度でも食べに行きたくなります。ちなみに、夕飯前の時間帯になると店には鍋やフライパンを持参した地元民が訪れます。夕飯のおかずにお持ち帰りするんだそう。あぁ、うらやましい。
私のお気に入りは「豚1.5、ご飯中盛り、ノンアルコールビール」。書いてたら、また食べたくなってきました。天下茶屋の焼き肉、最高!!
天下茶屋
宿毛市平田町戸内1869-6
0880-66-0541
営業時間 11:00〜18:30(日曜日・祝日は〜19:00)
定休日 土曜日
駐車場10台