四国の西南端の高知県大月町に住む農家・松田家で、お茶と言えば、この黄金色に輝く、ザ「きし豆茶」です。
全国的に大変珍しいこのお茶のルーツは、古く江戸時代にまで遡ります。
土佐藩のお殿様が贅沢なお茶(緑茶)を庶民に飲むことを禁じた時代がありました。
仕方がない庶民は番茶と川岸などに自然に生えていた雑草「きし豆」(カワラケツメイ・河原決明という豆科の植物)を多く混ぜて、「これは緑茶ではございません」と殿様の目をごまかしていたという昔話が残っています。
今でもそのブレンドのお茶は「土佐番茶」として残っており、県内で普通に買えます。
その名残があってか、まったく緑茶が栽培されていない、亜熱帯地域、ここ大月町では、きし豆が自然に自生しており、緑茶・番茶のブレンドなしで、きし豆茶100%を好んで飲みます。
さらに、私の実家・松田家は、毎日自家用で飲むだけでなく、毎年大量に畑で栽培している珍しい農家です。
あまりにも「きし豆茶」を好むあまりに、長男の私が実家に帰った時に寝る大切な部屋をまるまる茶葉の保管部屋にするほど、このお茶を愛しています。
この松田家の愛する「きし豆茶」の最大の特徴が豆の香ばしさと甘み。そして葉のフレッシュ感が混じり合い、私の家ではどの茶葉よりも優れていて味も一番美味いと決めつけています。
普通に飲んでも香ばしく甘さもあっていいのですが、一番のオススメはお茶漬け。苦味がほとんどなく、豆の香り甘み旨味と葉の爽やかさで、ご飯とお茶だけでさらさらいけます。
はるか昔、雑草だったきし豆は、現在の松田家ではなくてはならない大切な日常茶へと地位が上がり、今ではかなり手間暇かけて最高のお茶に仕上げています。
5月に豆をまき、夏の雑草生い茂る季節には他の雑草と混じらないように頻繁に草を引きます。元雑草なので農薬はまったく必要ありません。他の雑草との戦いをくぐり抜けて、やっと草の心配がなくなった秋に収穫です。
収穫したら小さく束ねて水洗い。その後すぐに半影シートを被せたビニールハウスの中で5日間天日干し。ある程度乾燥したら粗めに裁断し、さらに十分乾燥させるために1日天日干ししてひとまず完成。
ここまでが、茶葉専用部屋にある状態。自家用で飲んだり、近所の道の駅などに出荷する時は最後の仕上げ作業に入ります。
弱火で時間をかけて焦げないように手でかき混ぜながら焙煎します。
その際、普通は太い茎もそのまま入れるのですが、松田家では太い茎は味の邪魔間ので、焙煎しながら一本一本取り除きます。
こんなに丹精込めて、手間暇かけて仕上げた「きし豆茶」。ヤカンいっぱいの水に一掴みの茶葉を入れ煮出すだけで香ばしいお茶がたっぷりとれるのでとても経済的です。
安いのにこんなに香りも味もいい。農薬いらず、苦味なし。黄金色に輝くこの変わった珍しいお茶。新たな日常茶として、またはお茶漬け専用茶としていかがでしょうか。ちなみに夏の暑い日には冷やしても美味しく、この香り味は健在、麦茶代わりにグビグビ飲めます。粉茶は香りのいいクッキーもオススメです。
ちなみに父は「これを飲んで嫌いと言う人はいない」と豪語するくらい自信まんまん。
四国の西南端の町・大月町に存在する「きし豆100%のお茶」。多くの人にその存在と味を知っていただければ、私の両親が喜びます。
生産者:高知県大月町 松田良徳