須崎市の町中、特に旧商店街の辺りはメインの大通りの周りに狭く細い路地が入り組んでいて迷路のようになっています。そんな複雑な通りのひとつにあるのが、今回紹介する『谷岡食堂』です。
谷岡食堂は現在のおかみさんのお母さんが、およそ50年前に駄菓子屋として商売を始めました。5年ほどして、段々と食堂に変化していき今の形になったのだそうです。パッと見では食堂とは気づかず通り過ぎてしまう人もいるほど、その佇まいは町の中に静かにしっくりと馴染んでいます。
入口のすぐ横にはガラスのショーケースがあり巻き寿司やお惣菜が並ぶのですが、お昼の時間帯にはすでに何も並んでいないことの方が多い気がします。
足を踏み入れると、これぞ大衆食堂というような、長机に丸椅子、無造作に置かれたポットやコップ、部屋の門の上にはテレビ。
懐かしい気持ちになり、子どものときに外食に連れてもらったときの様な感覚が思い出されて、ほんのちょっとだけ、そわそわしてしまいます。
サバ寿司ーサバ寿司の概念が覆る、衝撃のおいしさ
ここでは壁にある手書きのメニューやショーケースを見て、食べたいものを注文します。
常連さんが「ここは何を食べてもうまい」という谷岡食堂の中でも、絶対に食べてほしいのは『サバ寿司』です。
何よりも一番驚くのは、一般的に出回っているサバ寿司の味とはまったく違うこと。
普通のサバ寿司はサバが傷みやすいこともあり、お酢できつめに〆ていて甘みが強いのですが、谷岡食堂のほんのり塩気がきいた味わいであっさりしています。
なぜ塩気があるのかというと、良い清水サバが手に入ったときしか作らないというこだわりがあるから。
新鮮なのでお酢は控えめで十分なのです。
身はほどよい固さで、お箸で掴むとホロリと崩れます。
今では『幻のサバ寿司』と言われるほど人気になり、お店に並んですぐに売り切れるほど。
とにかく一度食べると忘れられない美味しさです。
巻き寿司ー長きに渡って、受け継がれるお店ならではの味
そしてもうひとつ。
『巻き寿司』もすぐに売り切れてしまう人気商品。
皿鉢料理や寿司桶にのっかっている巻き寿司は甘みの強いものが多いですが、こちらの巻き寿司は甘さ控えめ。
中の具に甘い味付けのものもありますが、さっぱりとした酢飯の良いアクセントになっています。
三つ葉やごぼうなどの具材とゴマの歯応えも楽しく味わえます。
中華そばー思わず「これこれ」と唸る味
そして、最後はおかみさんがお母さんから受け継いだ『中華そば』です。
麺は細麺。具はチャーシュー、かまぼこ、たけのこ、ネギといたってシンプル。
最初にスープを一口。鶏だしのやさしい甘みと旨味が口いっぱいに広がります。
思わず「これこれ」といってしまうような、そんな味です。
この感覚は食べてみないとわからないでしょう。
須崎市で半世紀以上、愛され続けている『谷岡食堂』。
一度通うと、誰かにその美味しさを伝えずにはいられない、そんなお店です。
※サバ寿司を絶対に食べたい!という方は事前の連絡でお取り置きしてくださる場合もあります。
午前9時30分~10時頃からお店の電話がつながります。
新鮮な清水サバが入った日のみの販売です。
毎日あるわけではありませんので、ご注意ください。