谷から吹いてくる風、草の匂い、土間のひんやりした空気、人の息遣い・・・生きている匂いが満ちているような映画。
日本最後の桃源郷と言われる徳島県・祖谷(いや)を舞台に物語は進む。
自給自足の生活に憧れて、東京からやって来た青年・工藤。
平和に見えるこの土地も、環境保護を巡っての対立や害獣との戦いなど様々な問題を抱えていた。
一方、人里離れた山奥ではお爺と春菜が効率や雑音とは無縁の昔ながらの生活を営んでいた。
工藤は二人の暮らしぶりにふれ、都会の生活で病んだ心が浄化されていくのを感じる。
しかし季節が巡り、ずっと続くと思っていた暮らしに変化が起き始める。
進路に悩む春菜、体調が悪化するお爺、そして厳しい自然との共存生活に限界を感じ始める工藤。
微妙にズレ始めた現実の中で、彼らが選んだ道は・・・。
この映画の監督・蔦哲一朗さんは徳島出身の方。
その昔、徳島県池田高校の野球部を日本一に導いた監督・蔦文也さんのお孫さんである。
野球監督の孫が映画監督となり、彼は時代の波に逆らうようにアナログで世界を切り取っている。
35mmフィルムで1年かけて撮影を行い、作品完成までにかけた歳月3年。
急かされるようなスピードに満ちた現代において、珍しささえ覚える制作過程。
まだ29歳の監督の今後にも期待したい。
四国での上映案内
【高知】
6月8日(日)~6月20日(金)
あたご劇場
http://neconote.jp/atago/
【徳島】
6月14日(土)
10:30/14:00
北島町立図書館 創世ホール
http://www.town.kitajima.lg.jp/hole/
【香川】
7月26日(土)~8月8日(金)
ホール・ソレイユ
http://kagawa-soleil.co.jp/