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高知で雑貨と食、音楽のイベント「ヴィレッジ」開催

やなせたかし記念館 anpanman museum(香美市)

2013.5.15 

アムリタ|よしもとばなな

「どーん、とそこにいて、美しく圧倒的にぴかーっと光ってればいいの。
愛っていうのは、甘い言葉でもなくって、理想でもなくて、
そういう野生のあり方を言うの。」

わたしはその夏、四国に行きたかった。

からっと晴れた青空と、まぶしいほどの緑と圧倒的な自然が恋しいまま
ベトナム行きの飛行機に乗り「アムリタ(上)」を開いていた。

搭乗時間は約6時間。
上巻を読み終え、下巻に手をのばすと、なんと下巻だと思っていたものも上巻だった。
なぜだか2冊も上巻を買っていたのだ。

手持ち無沙汰なわたしは、ANAの機内誌「翼の王国」に手をのばした。
そこに掲載されていたのは、四万十川に勢いよく飛び込む川ガキたちの姿だった。
ますます四国への想いはつのった。

帰国してすぐに買った下巻のなかで、主人公たちが旅をした場所が高知だった。
そしてその月のおわりに神山・高知行きを友人に持ちかけられた。
神山ではいまもとてもお世話になっているひとたちに出会い、
(会わなかったら四国に住んでいないかもしれない)
高知では23年間生きてきてはじめての流れ星と天の川に出会い、
「今日も1日たのしかった」と眠りにつく1週間を過ごした。

その年の冬に、四国生活をすることになりはじめて地元を離れたのだった。
あれから早2年半。わたしはいまも四国にいる。

暮らしには、すぐ慣れる。
確かに、ごはんを食べて眠る場所が自分の居場所なのだ。それが基本だ。

(写真:高知県室戸市)


あらすじ
(上)妹の死。頭を打ち、失った私の記憶。弟に訪れる不思議なきざし。そして妹の恋人との恋―。流されそうになる出来事の中で、かつての自分を取り戻せないまま高知に旅をし、さらにはサイパンへ。旅の時間を過ごしながら「半分死んでいる」私はすべてをみつめ、全身で生きることを、幸福を、感じとっていく。懐かしく、いとおしい金色の物語。吉本ばななの記念碑的長編。

(下)サイパンの心地よい生活、そして霊的な体験。親しんだバイトとの別れ。新しいバイトの始まり。記憶は戻り、恋人は帰国し、弟は家を出る。そして新たな友人たちとの出会い―。生と死、出会いと別れ、幸福と孤独、その両極とその間で揺れ動く人々を、日々の瞬間瞬間にみつけるきらめきを、美しさを、力強く繊細に描き出した、懐かしく、いとおしい金色の物語。定本決定版。


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