
演劇祭KOCHI2012のアフタートークです。各劇団の代表者が上演作品を振り返ります
本題に入るまでの前置きが長い……高知の劇団いろいろ
ご無沙汰しております。高知市で元気に活動している劇団シアターホリックの松島です。ちょっとだけ暑さが和らいできましたね。このクソ暑い中、ぼくは秋に上演する新作芝居の脚本を書いておりました。「なかなか書けないんで苦労してます……」なんてことになってるかと思いきや、それが普段とは違ってスイスイと筆が進みまして。10人も出演する大きな作品ですので、書くのに骨の折れる大変な体力を使ったのは確かですが、それにしても無事に書き上がりましたよ。よかった。また公演が近付いたらここでご案内しますので、どっか頭の隅にでも引っ掛けておいてくださいね。ひとつシアホリの新作にも応援よろしくお願いします。
さてさて。その昔ドカベンというマンガがあったのをご存知ですか? 高校野球編です。各県から超個性的な学校が地区大会を勝ち上がってきまして、「そんなんあるわけないだろ」みたいな高校の野球部が繰り広げる水島信司のドリームマッチ甲子園大会なんですが。え? 知らない? ではではハイスクール奇面組は? 「一応高校」を舞台にした学園コメディで、様々な変わり者5人組が続々と登場して。ほら、おニャン子クラブが主題歌の。……そうですか。一部の世代、そのまた一部の方々だけが深くうなずくだけで、ほとんどが口を横一文字にして苦みばしった表情をされてますか。いいんですよ、ただのたとえ話ですから(もうちょっとだけ引っ張りますが)。
ドカベンやら奇面組やら、我々読者はそのドタバタな展開に胸を躍らせながら読みふけったものでした。その魅力の大きな要素に、グループ感がありました。個性がただ単純な形でばらばらに登場するのではなく、似たような個性がグループを組んでいる。明訓高校とか奇面組なんてそのグループひとつを取り上げるだけでも十分面白いのに、また別のグループが現れて、新たな物語を展開させます。いやー、グループものいいですよね。
グループものをこよなく愛するぼくが、やがて劇団に興味を持つのは必然でございました。ホント劇団なんてものは、ある種のグループ感と言いますか「奇面組テイスト」を持っているのです。だってね、誰に頼まれたわけでもないのに人が集まり、その人たちが手間のかかる作業をして、苦労してお客を集めていよいよ本番、それがお芝居なんですから。非効率かつめんどくさい方法を使って、目の前の人に面白いことをやってみせるのが劇団です。こんな集団がいくつも自然発生するなんて、ある意味マンガ的じゃありません?
前置きが長いね。これは四国大陸なんだ、フツウの演劇論を長々と語る場ではないんだ! まあつまり、今回は四国のいろんな劇団をご紹介したかったんだー、とダイナミックな話題転換かつ方向修正でようやく本題です。「奇面組」や「明訓高校」のくだりは、それくらいの個性的な集団が四国各地で活動を続けておりますよ、とそんな認識でオッケー。ホント、各劇団の個性ってもんは「同じ地域でこうも違う団体がうまれますかね?」というくらい、てんでバラバラなんですね。
それぞれご紹介しますと、高知には我々シアターホリックの他に、前回ここで取り上げた「劇団.どっと」、ストイックな俳優さんが真剣にコントする「シャカ力(しゃかりき)」、ウェルメイドな笑いや日本演劇の話題作を次々に取り上げる実力派「TRY-ANGLE」、アングラで見世物小屋的世界観の「屋根裏舞台」、そしてアングラ見世物的世界観といえば「劇団彩鬼(いろおに)」も外せません。劇団はカリスマ的女優が引っ張るというのは今も昔も変わりませんが、彩鬼もその例にもれず、恵那さんのパワフルなお芝居は必見ですよ。

シャカ力の本公演より

トライアングルは美術をがっつり建て込むのです

照明など、派手な効果の屋根裏舞台
高知にはその他、老舗や若手を含めると(ぼくが把握しているだけでも)10近い劇団があります。そしてぼくたち若手(中堅?)劇団で高知演劇ネットワークという組合のような団体を運営しておりまして、年に一度演劇祭を実施したり、蛸蔵という劇場の運営に関わったりしております。
まいったなあ、随分長くなりました。今回はこの辺でやめにしましょうか。いや、計画ではこの勢いで愛媛と香川も一緒に紹介するつもりだったんですよ。そして、この連載を始める理由、そしてここまでもったいぶってきた野望の一つでもある、「全く入ってこない徳島の演劇情報を求む!」というところまで進めるつもりだったのに。って、次回書くであろうオチをこんなにあっさりバラしてしまっていいのかよ! 野望はもったいぶるんじゃなかったのかよ! 半分もマンガの話を書くからこんなことになるんだよ……というわけで次回は愛媛と香川の演劇事情についてです。このお話はまだまだ続くのでありました!