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【現代地方譚3/アーティスト・イン・レジデンス須崎】展示期間中プログラム『ちょこぶら』アートと町並み、グルメ、歴史・文化を楽しむ町歩き

四天の舞

11月23日奉納。400年の伝統を受け継ぐ土佐最古の神楽「池川神楽」

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2015.11.13 

【現代地方譚3レポート】アーティストの手によって描かれた物語をなぞりながら、私と私の世界を見つめなおす

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11月3日(火・祝)から展示が始まった『現代地方譚3・アーティスト イン レンジデンス須崎』。
キュレーター・兼平彦太郎さんは第1回、第2回目を引き継ぎながら新しい要素を加えた構成を練り、これまでにない雰囲気の現代地方譚を生み出した。

展覧会がはじまる前、兼平さんはこんなことを話していた。

「現代アートはとてもおもしろい。
見る人が自由に何を感じても良いし、分からないままで良い。
そこで、なぜそういう気持ちになったのか、
なぜそう感じたのか、ということを考えることがおもしろくて。

今の世の中は、分かり易いものが求められていて。
でも分からないままで置いておくと、
数年後に“そういうことだったんだ”と気づくこともあるし
ずっと心の中に残っていることもある。
待つ、留めておく、というような感覚を持てるのがアートだったりする。」

普段は空き家が目立ち、シャッター街となった寂れた商店街を舞台に兼平さんとアーティストたちが創りだした現代アートの数々を目当てに、いつもは人もまばらな場所に無数の動く影がちらほらと見える。

キュレーターの兼平さん(中央)

キュレーターの兼平さん(中央)

現代地方譚3の第二の幕が上がった。

境界線を越える、アーティストの錬金術

展示場所のひとつである「まちかどギャラリー」には展覧会におけるキーワード『境界線を越える』に基づいた、7人のアーティストの作品が展示されている。

何もないところから何かを生み出す「錬金術」を持つアーティストの力によって
見えない世界を想像する、覗いてみる、相反するものを否定せずに受け入れる。
価値がない、と認識されているものが人の手を借りて可能性を見出すものに変化する。

これは、ある意味で『自分自身と自分を取り巻く世界を今までと異なる視点で見つめなおすこと』に通じる。

誰しも自分で無意識に張り巡らしている、または物質的、精神的に体感している境界を持っている。
ある意味、境界があるからこそ「自分」というものの存在を認識しているのだが、それがない状態の「真っ新な自分」というのは何にもとらわれない、自然なままの姿である。
それは言わば「自分の内面とつながる瞬間」ということではないかと思う。

自分が感じる心の声に耳を傾け、寄り添い、その感情が密かに心の奥で求めていたものなのかもしれない、と気づかされる。
そんな時間を体感することができる作品があちらこちらに点在している。

第1回目・2回目のキュレーターでもある、竹﨑和征さんの作品。窓から出た梯子(内)は海へ続く道(外)へとつながる。部屋に置かれたレモンは外から眺めると色がより際立っている。

第1回目・2回目のキュレーターでもある、竹﨑和征さんの作品。窓から出た梯子(内)は海へ続く道(外)へとつながる。部屋に置かれたレモンは外から眺めると色がより際立っている。

磯谷博史さんの作品。ギャラリー内に展示されている作品のひとつ。時間帯によって窓から差し込む光が一面に広がり幻想的な空間へ変わる。そして闇と光が明確になる。

磯谷博史さんの作品。ギャラリー内に展示されている作品のひとつ。時間帯によって窓から差し込む光が一面に広がり幻想的な空間へ変わる。そして闇と光が明確になる。

臼井良平さんの作品。ただのペットボトルのように見えるが、素材はガラス。普段、当たり前に眺めているものが実は全く性質が違うものに。疑いもなく見ていたモノの見え方が変わる。

臼井良平さんの作品。ただのペットボトルのように見えるが、素材はガラス。普段、当たり前に眺めているものが実は全く性質が違うものに。疑いもなく見ていたモノの見え方が変わる。

山根一晃さんの作品。『あちらの世界とこちらの世界』見えないあちら側を想像してみる、ということをじっくりと考え体感できる。奥には森本美絵さんとのコラボ作品も展示されている。

山根一晃さんの作品。『あちらの世界とこちらの世界』見えないあちら側を想像してみる、ということをじっくりと考え体感できる。奥には森本美絵さんとのコラボ作品も展示されている。

その他、伊藤存さん、クサナギシンペイさん、小西紀行さんの作品が展示されている。

対極のものが交じり合い、融合する瞬間

前回に引き続き「錦湯」には2名の作家の作品が展示されている。
この2名は絵を描きあげるまでの制作過程が真逆である。

クサナギシンペイさんは生成のキャンバスに層を重ねて風景を描き出す。
描く、水でぬらす、乾かすという工程を繰り返すため、非常に時間がかかる。

風景を積み重ねて描かれる、クサナギシンペイさんの作品。抽象画に取り掛かる前に細密画をスケッチの代わりとして描いているという。クサナギさんの手法の中にも対比が見られる。

風景を積み重ねて描かれる、クサナギシンペイさんの作品。抽象画に取り掛かる前に細密画をスケッチの代わりとして描いているという。クサナギさんの手法の中にも対比が見られる。

一方、小西紀行さんは紙パレットを使用し、絵の具をふき取る手法で人物を描き出す。
乾かないうちに描きあげるので、完成までの時間が早い。

人物を中心に描かれることの多い、小西紀行さんの作品。独特な色使いの絵が一面に広がり、その光景に思わず声をあげてしまう人もいるほど。

人物を中心に描かれることの多い、小西紀行さんの作品。独特な色使いの絵が一面に広がり、その光景に思わず声をあげてしまう人もいるほど。

錦湯は元銭湯。
男湯・女湯という男女の境界が元々はある場所でもある。
その中で描き出された2つの異なる世界観は、違和感なく交じり合い、融合し、それぞれの作品を際立たせている。

レジデンスをきっかけにコラボレーションした作品を生み出した両者。
相手の手の内を知ることは、自分への気づきになった、と話す。

まちかどギャラリーの「静」/公文邸の「動」

初めて展示場所となった「公文邸」は昭和34年頃まで味噌の醸造をする傍ら牧場を営んでいた、という須崎市内でも有名な大地主だった。
ここでは5人のアーティストの作品が展示されている。

「まちかどギャラリー」が「静」かに落ち着いた雰囲気だとするなら
「公文邸」はほとぼしるものがちりばめられた「動」きの多い雰囲気だ。

第1回目の現代地方譚から参加している竹川宣彰さんは、前回に引き続いて「のぶ子」のパフォーマンスとコケシの制作を行った。
この「のぶ子」は須崎市の女性たち(すさき女子)と交流し、そのときに感じたものから誕生した。
高知県の女性は「はちきん」と言われるほど元気で明るくて強い。
でも、そこまで強くないといけない社会なのか?と疑問を持ったことがきっかけだった、という。

竹川宣彰さんの作品。須崎市の女性をモデルにして制作しているというコケシ。今度も数が増えていくそう。

竹川宣彰さんの作品。須崎市の女性をモデルにして制作しているというコケシ。今度も数が増えていくそう。

「のぶ子」は性の境界線を越えたもの。
須崎の女性に出逢ったことで、命が吹き込まれた1人の現実とも非現実とも言える人物。
今回、新たに作られたコケシを含む8体は、はちきん(eight balls)の皆にチアガール部隊がいるよ。
というメッセージを込めて作ったそうだ。

2階には、第2回目にレジデンス作家として参加していた松村有輝さんの作品も展示されている。
作品に使用されている素材は本来は捨てられていたものだった。
あるとき、くしゃくしゃになった素材をふと見ると、それまではただの廃棄物だったと思っていたものの見方が変わった=モノとして捉えたのだという。

松村有輝さんの作品。展示場所の部屋の写真をプリントし作りあげた。遠方地で制作した作品と、須崎市で制作した作品との対比も見られる。

松村有輝さんの作品。展示場所の部屋の写真をプリントし作りあげた。遠方地で制作した作品と、須崎市で制作した作品との対比も見られる。

前述したクサナギさんと小西さんのコラボレーション作品も展示されている。
1日一作品、将棋を打つように相手の一手一手を見ながら描いた、という作品である。

クサナギさんと小西さん、正反対の2人がお互いの技法を用いて合作を生み出した。展示期間の直前に急遽、展示を決めたのだという。

クサナギさんと小西さん、正反対の2人がお互いの技法を用いて合作を生み出した。展示期間の直前に急遽、展示を決めたのだという。

その他、COBRA+八重樫ゆいさん、小野象平の作品なども展示されている。

上記以外の展示場所と展示作家

・JR須崎駅(川鍋達さん、森本美絵さん)
・駅前倉庫(大木裕之さん)
・黒岩書店(持塚美樹さん)
・寿屋(横田章さん)
・須崎市立図書館(西村知巳さん)

現代地方譚3という存在が与えてくれるもの

自分という枠、ある種の境界を越えて出逢った世界には、まだ知らない自分が露わになる。
訪れた人も同じように作品の世界観を通じて、この感覚を味わう。

自分の中になかった感情や溢れだしそうな想い、言葉にもできないくらい簡単に表現できないようなもの。
ゆるやかに繋がりながら紡ぎだすように静かにゆっくりと時に激しく心の中に流れ込む。
これまでの自分とは違う、初めて見るような側面が顔を覗かせる。
それは、本当に自分が求めているものを再認識させてくれるようでもある。

滞在制作期間中、まちかどギャラリーのスタッフでもあり、自らも芸術家として活動している川鍋さんに「現代地方譚」という取り組みについて聞いたことがあった。

そのとき、彼は『自分の居場所をつくるためだった』と答えた。

今回の展覧会で彼の出品した作品の副題は「海の扉」。
海という言葉の語源は生む。
作品には「何もない中に自分なりの価値や意味を見つける」というテーマが隠れている。

川鍋達さんの作品。駅は入口と出口、出会いと別れ、といった境界のある場所。

川鍋達さんの作品。駅は入口と出口、出会いと別れ、といった境界のある場所。

はからずも、今回の現代地方譚のテーマは「境界線を越える」。
須崎市という町とアートの境界を越えようと、日々奮闘していた彼にリンクするキーワードが2年という時を経て3回目を迎える今年、導かれるように確かに表れた。
訪れたアーティストたちが描き出した無数の物語が、その軌跡をなぞるように彼自身につながっているように思えたのだ。
その偶然とも必然ともいえる瞬間を思うと、自然に胸が熱くなった。

展示期間と展示期間中のプログラムのご紹介

2015年11月29日(日)までの午前9時~午後5時
※月曜休館/祝日の場合は翌日休館
※入場無料

■11月28日(土)午後から
キュレーターを務めた兼平彦太郎さんによる作品解説を行います。
詳細は、まちかどギャラリーへお問い合せください。

■展示期間中の土・日・祝 午前10時~午後4時
ドリンクなどを提供するカフェと須崎市の特産品などの物販を行っています。

<現代地方譚3関連サイト>
公式HP:http://airsusaki.tumblr.com/
FBページ:https://www.facebook.com/airsusaki/

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