新しい土佐和紙誕生の予感とひらめき
前回の第三回では、西丸雅之氏(フォト・ギャラリー・インターナショナル マネージャー)と高知の若手手漉き和紙職人グループ、「土佐の山・紙資源の会」の7名が初対面、実際のプリント制作も初体験しました。
この時、支持体(紙)によるプリントの違いを理解するために、プラチナプリントに用いられる洋紙、会のメンバーが持ち寄り提供くださった手漉き和紙、全14種類に実際にプリントを行いました。
テストプリントの結果、注目したのが「いの町吾北産土佐楮100%」の楮和紙でした。(こんにゃく塗布加工あり、2010年製)でした。楮和紙の特徴である長い繊維は主張しすぎず、プリントも和紙のテクスチャーに引っ張られすぎないシャープな仕上がりが実現していたのです。
プラチナプリントに使用する和紙は現在雁皮和紙が主流なのですが、このテストプリントを皆で見た時、楮和紙で土佐和紙らしいの特徴あるプラチナプリント用紙が作れるかもしれない。これまでとは違う土佐和紙ができそうな予感と、キラッと光る希望のような、新しい何かを確かに実感した瞬間でした。
テストプリントした和紙の中から楮和紙を含め、数種類を実際に写真家に提供し、テストマーケティングを行うことにしました。紙厚、塗布加工など仕様の違うものを3種類7パターンを用意。
プラチナプリントにはどのような和紙が求められるのかの本格的な研究が始まりました。
プラチナプリントにとって理想の和紙とは?
1. 保存性の高さ
プラチナプリントの保存性は500年と言われているため、それと同等、もしくはそれ以上の保存性を有する
2. シャープかつ柔らかで美しい階調
3. 引き締まった黒、濃度の高さ
4. 均質であること
5. 感光液を塗布しても毛羽立ちにくい
6. 現像処理で長時間濡れても溶けたりちぎれたりしない
7. 不純物、特に鉄などの金属粉やイオンを含まない
これらの条件を満たした土佐和紙らしい、最高のプラチナプリント用和紙を求めて、職人たちの挑戦はまだまだ始まったばかりでした。