香川県三豊市の沖に浮かぶ粟島(あわしま)は、
藤井フミヤさんが国民的テレビ番組で「もう一度訪れたい島」の1位に挙げた島です。➡参照記事
インタビューの中で、「(粟島は)アーティストが滞在して作品制作をする環境を整えていますが、そういう取り組みはすごくいいことだと思います。」とフミヤさんもおっしゃるとおり、島では、旧粟島中学校(休校を経て2014年の四月に廃校)を『粟島芸術家村』としてアーティストを招聘、滞在中に作った作品の期間展示を行ってきました。
2014年の秋に第7回「粟島芸術家村滞在作家展」が大盛況のうちに終了。なんだかさみしいなぁと思っていたら、実は、会期が終わった今でも、月に2日だけ作品が鑑賞できるのです。
鑑賞日時は第2・4土曜の13:00〜16:00
※2015年6月まで
さっそく行ってみました。
会場では制作に携わった島の方たちが説明をしてくれるのでとてもリアリティがあります。
構内全体を船ととらえた会場に入ると、信号旗がずらりと並んだ廊下をあるいて船室(展示室)へ。
まずは、「誰かのための染め物展」。
この「誰か」とは、島の方のことです。作品には島の人が書いた「注文書」なるものが添えられていて、注文に応じて出来上がった作品を展示しているのですが、注目すべきはその注文書。
例えば、
「粟島の大衆演劇で使う衣装が欲しい」→演劇好きが高じて70歳過ぎにして大衆劇団をつくってしまったおじいさんがいるんです。
「藤井フミヤさんに30周年祝いの旗(衣装)を贈りたい」→フミヤさんと仲良くなった島のおかあさんたちの注文。島を歩いていると、フミヤさんが寝転んだという「フミヤベンチ」なる名所があったのですが、これもおかあさんたちが名付けたのだと推測。
書面から浮かび上がる島の人たちの個性がなんとも面白い。
ちなみに、30周年祝いのマントは、ちゃんと藤井フミヤさんのもとに届けられ、香川県でのコンサート会場でもしっかり披露されていましたよ(この目で見た)。
もちろん、「ぐっすり眠れる寝具が欲しい」、「おしゃれに庭仕事ができるズボンが欲しい」などの実用的なオーダーもあって、展示期間が終わればその作品は「誰か」つまり注文した島の人たちのものとなります。
次は、「粟島自然観察船 ANOS」
展示室に入ったとたん「かわいい!」と声を上げてしまいました。まるで雑貨屋さんのようなたたずまい。よーく見ると、貝殻や木、葉っぱなどがわんさか。「これなぁ、みんなで手分けして拾ってきたもんなんや」と説明してくれるのは島のおじさん。「こんなにたくさん! どれもきれいですね」とテンションが上がりすっかり見入ってしまいました。貝殻の美しさときたら・・・大きさもかたちもさまざまで初めてみる貝ばかりでした。
「ぜんぶ粟島でとってきたもんやけど、島に長年住んでいるわしらでも初めて見る貝があるんや。世の中は、知らないことだらけやなぁ」とおじさん。
どれだけ目を見開き、どれだけ長く生きても、わからないことはたくさんあるということ。そのぶん、新しいことを知る瞬間の高揚感やすがすがしさをいつまでも感じていけるという可能性。
展示と島の方のお話を通して、そんなことを思ったのでした。
鑑賞できるのは2015年の6月までです。