須崎市は、かつて高知でも指折りの産業都市だった。
漁港として、佐川や仁淀川の石灰岩やセメントの搬出港として、深い入江を持つ軍港として、高知県西部の交通の要衝として、比較的最近まで賑やかな地方都市のひとつであったように思える。
なにしろ、高知県内で鉄道がはじめて引かれたのもこの街からだ。しかし、多くの地方都市がそうであるように、須崎市もここ数年で一気に元気がなくなった。
ついぞ最近まで豊かだった分危機感に乏しくて、周辺環境がぞろっと変わっていてもそれに気付くことができず、気がつけば取り返しの付かないことになっていた、という意味では地方都市にありがちな話といえばありがちなことだ。そういう小さな都市で、芸術が何かできないものか?というのがこの取り組みの根幹にある。
作家たちは、実際にこの須崎を歩き、現在をみつめ、それを作品という形で昇華する。
果たしてどのような作品が生まれるのか?
今年もまた、須崎の街で「現代地方譚」が開催される(➡去年の記事はこちら)。
9月27日より6人の作家が須崎の名家であった旧三浦邸、現在のすさきまちかどギャラリーに滞在して公開制作を行い、
10月12日から一般展示がスタート。
また同日からさらに10人の作家が加わって市街地各地の旧家や銭湯跡などで作品を公開する。
六人の作家たち
レジデンス作家紹介
(紹介文は現代地方譚2チラシより)
▲クサナギシンペイ(東京)
絵画というものに対し、あらゆる意味で自由なスタンスでいられる稀有な作家。ワールドワイドに活躍する作家の目に須崎はどう映るでしょうか。
▲小西紀行(広島)
普段「家族」をテーマに絵を描く小西さん。『現代地方譚1』では須崎の昔話を蔵の壁一面に描き出してくれました。須崎での発見から、また新たな展開が見られることを期待しています
▲竹川宣彰(埼玉)
『現代地方譚1』では、櫂のそろばん、貝殻のついたバット、須崎日記など、幅広い表現を見せてくれました。今回も竹川ワールド全開です
▲西村知巳(東京)
穏やかで暖かい彼の眼差しは、鑑賞者の心にゆっくりと染み渡っていくと思います。四国・高知にも縁の深い作家の目で見た須崎にぜひご期待ください
▲松村有輝(東京)
ものの見方とは?立体物とは?を問う松村さん。私たちの周りにある、ありふれた素材で作られる作品はとてもクールで、けれどもユーモアにあふれています
▲持塚三樹(静岡)
持塚さんは自然の風景イメージと絵画における抽象的表現を自由に往来できるような絵を描きます。研究熱心な制作スタンスから生まれる、描く喜びが全面に表れた絵画をぜひご覧ください
▲森本美絵(東京)
広告制作、音楽、ファッション、美術、建築など幅広い分野で写真を発表している森本さん。次回の『現代地方譚』での発表に向けて須崎の歴史・文化をリサーチします。
展示作家紹介
▲石井葉子(高知)
「妖怪イヌジマ」で有名な石井さん。須崎では新たな観客参加型プロジェクト「沖の島初猫祭」の報告展示になります。RPGゲームのように島を探検した軌跡をご覧ください
▲川鍋達(高知)
『現代地方譚1』では柱のインスタレーション展示をした川鍋さん。今回どんな空間を引き立てるのか、コントロールするのか、どちらも?ぜひお楽しみに
▲竹田篤生(高知)
いつもは身近な人をモチーフに作品制作をしている竹田さんは、今回新たな試みとして触覚を意識した彫刻を制作します
▲デイビット・グラント(高知)
独自の視点で町の風景を切り取る彼の写真は、一見普通のようでその実、硬質な技術と発見にあふれています
▲ひさまつまゆこ(高知)
《こころ》《やさしさ》とは?昨年、絵本『やさしいかいじゅう』に取り組んだひさまつさん。今回は絵本の原画に加えてイラストも展示します
▲丸岡慎一(高知)
須崎の隣町・久礼に地域おこし協力隊としてやって来た、イラストレーターで絵本作家の丸岡さん。愛らしくも洗練された画風は物語とも相性抜群
▲山崎香織(高知)
人にとってなくてはならないモノ・布。その布に、山崎さんはロウと染料を用い色を重ね、美しい色を作り出します。絵画とはまた違った意味合いを持つ染色の魅力を引き出します。
ライブ&パフォーマンス紹介
山/完全版(京都)
2013年デビューのライブパフォーマンスユニット、山/完全版さん。ゆるい散歩を裏側から眺めるような、ずれた風景を描く音律とリズム、ありそうでないような文脈とその派生の可能性。逆立ちしながら穴を掘る。ご近所さんの音楽の集いに迷い込む路地奥からのストレンジャー
嶋尾パルピーちゃんwithコッティ君(高知)
高知市北秦泉寺にあるカフェ「じんぜんじゅ」のオーナー下尾仁を中心とした、今回のためだけに構成されたパフォーマンス集団。「じんぜんじゅ」では創作詩の朗読、演劇、パフォーマンスなど、得意分野を持ち寄り自由に表現、発表する「日曜マイク」というイベントを定期的に開催。須崎ではどんな「日曜マイク」が見られるでしょうか?
会場
メイン会場/すさきまちかどギャラリー/旧三浦邸
町の発展に貢献した実業家の邸宅と事務所。
《展示作家》クサナギシンペイ、松村有輝、持塚三樹、竹川宣彰、小西紀行、西村知巳
古民家商店
土佐漆喰のなまこ壁が残る店舗跡。元『ジーンズショップシェーン』 。
《展示作家》山崎香織
錦湯
町民やお遍路さんの憩いの場として愛されるも3年前に廃業した銭湯。
《展示作家》デイビット・グラント、竹田篤生
須崎市立市民文化会館
港に面した須崎市を代表する文化施設。
オープニングライブの様子を上映
《展示作家》山/完全版、嶋尾パルピーちゃんwithコッティ君
JR須崎駅
高知県最初の鉄道土讃線ゼロ基点。今年で開業90周年。
《展示作家》西村知巳
古民家茶室
築約100年の風情ある空間を特別公開。
《展示作家》川鍋達
駄菓子屋
町家の様な通し土間のある建物。かつては駄菓子屋を営んでいた。
《展示作家》石井葉子、ひさまつまゆこ、丸岡慎一
会期中のプログラム
ワークショップ
10.12(日) 森本美絵[写真]「カメラによるワークショップ」
10.18(土) 丸岡慎一[デザイン]「ぼくらの旗を掲げよう」
10.25(土) 山崎香織[染色]「すっけすけの布作り」
10.26(日) 石井葉子「初猫ワークショップ」
※開催時間等詳細はお問合せください。参加作家による体験講座。
まち歩き
10.13(月祝)、19(日)、11.1(土)〜3(月・祝)
須崎在住ガイドが街の見どころを紹介しながら展示を巡るツアーです。
ガイド:上野伊代(地域おこし協力隊)、須崎高等学校商業部
会期・入館料等
公開制作 2014年9月27日(土)〜10月10日(金)
展示会期 2014年10月11日(土)〜11月3日(月祝)
9:00-17:00 OPEN 月休 祝日の場合翌日休
すさきまちかどギャラリー入館料200円 ※公開制作期間中は入場無料 ※会期中再入場可
藁工ミュージアム共通チケット 400円
カタログ付きチケット1,200円 ※カタログは完成後お渡し(送料別)
主催◎すさきまちかどギャラリー
〒785-0004 高知県須崎市青木町1-16(佐々木・川鍋・松村)
TEL.0889-42-3951(代表) 050-8803-8668(9/27以降)
http://www.facebook.com/airsusaki