“感覚を研ぎ澄ます”とは、どういう行為なのか実感できる展覧会が、藁工ミュージアム(高知市南金田)で開かれている。
「斎藤裕一/mamoru 音楽をつかまえて」がそれだ。
金属製のハンガーを使ったmamoruの作品「etude no.11 ハンガー」が会場入り口で待ち構える。設置してある扇風機のスイッチを入れると、ポールに吊るされた22本のハンガーが、風で揺れ、触れ合う。
耳を澄ます。感覚を研ぎ澄ます。 すると、かすかな、わずかな、音が、耳に届く。
その感覚を維持したまま斎藤裕一の作品に向き合う。
色鉛筆を使って、画用紙に書きなぐったような斎藤の絵から、音が聞こえてくる。
リズムが見えてくる。
学芸員の大内郁が「2人のコラボから生み出された音楽を感じ取ってもらいたい」と語るように、mamoruの作品で研ぎ澄まされた聴覚は、絵からも音を感じ取れるほどになっていた。
そこで、ふと、いかに普段、耳に届きやすい音楽に囲まれているのかに気づく。
聴衆に届くよう増幅装置で調整された音楽は、聴こえなければ、ボリュームを上げるだけでいい。そこには神経を研ぎ澄ます努力はいらない。
この「音楽をつかまえて」展にボリュームはない。
耳慣れた音を遮断し、 感性のスイッチを入れよう。
すると、絵が、音が、音楽となって心の中に響いてくるはずだから…
藁工ミュージアム
「斎藤裕一/mamoru 音楽をつかまえて」展
開催中〜6月29日
〒780-0074 高知市南金田28 TEL.088-879-6800 http://warakoh.com/museum
■アーティストによるギャラリートーク
5月24日(土)14:00-15:00 出演:mamoru
5月25日(日)14:00-15:00 出演:齋藤裕一 + 小和田直幸(工房集スタッフ)
■イブニングレクチャー
5月29日(木)18:30-20:00 ※当日展示鑑賞は通常どおり18:00まで。
「音楽」と「アート」 Outside Music‐日常を変える「音楽」と「聴くこと」
講師:ロジャー・マクドナルド (特定非営利活動法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]副ディレクター)
■担当学芸員とのギャラリーツアー(手話ガイド付き)
6月7日(土) 14:00~(40分程度)