MENU

【現代地方譚3レポート】アーティストの手によって描かれた物語をなぞりながら、私と私の世界を見つめなおす

内子町五十崎、天神産紙工場にみる、大洲和紙の魅力。

2015.11.30 

宮脇慎太郎「曙光 ~ The Light of Iya Valley ~ 」

徳島県の祖谷を一年間撮り下ろした写真集を出版しました。

3
4

今年9月11日、自身の処女作となる一冊の写真集を上梓しました。タイトルは「曙光 ~ The Light of Iya Valley ~ 」。
日本三大秘境として知られる徳島の祖谷地方を一年間通い続けて撮り下ろしたものです。

国内外の放浪の旅を繰り返して帰ってきた故郷、四国。改めてその美しさに心打たれる自分がそこにはいて、まず絶対にここは撮りたいと通い詰めたのが徳島の祖谷でした。
雲海立ち込める深い渓谷、遥か高みに点在する高山集落、要所要所で痕跡を残す平家の落人、神秘的な祭り、全てを閉ざす冬の凍てつく山道、そして時折差し込む強烈な光・・・。今ならここを撮れる、直感こそが全てでした。

運命のように巡り合った出版の話、そして製作に携わってくれた人たち。

そもそも最初にここを撮って欲しいと言われたのは『なこち』という食堂を祖谷の落合集落で営む稲盛さんから。最初は阿波池田のマチトソラ芸術祭での写真展と小冊子の発行で終わる予定でした。
その写真展を見に来てくれたのが、葉山から豊島に移住したサウダージ・ブックスの浅野さん。「これはきちんと出版したほうがいいよ」とその場で言ってくれたのです。
さらに、ここから状況は大きく動いていきました。デザインしてくれたのは徳島市内でuta no tane というリトルプレスを中心としたお店をしている森さん。印刷は愛媛県松山の老舗、松栄印刷。そこを営むアキコさんは自身で森と出版という名義で出版活動をするなど以前から知っていて、写真集を出そうと思うという話をすると「是非!」と快諾してくれました。プリンティングディレクターは紳士の異名を持つ松栄の高松さん。初対面なのに僕の写真の深い所を一瞬で見抜き、意気投合しました。
ここまでくると残るは高知、でも製作にはもう無理かなと思っていると、帯に推薦文を寄せてくれた人類学者の今福龍太さんから届いた原稿が、なんと土佐和紙プロダクツ原稿用紙に書かれて送られてきたのです。第三者から思わぬプレゼントを頂き閃いた僕はそれ以降「曙光」の写真を土佐和紙にプリントして展示することにしています。
6
7
8
1213

出版からの怒涛の日々

写真集を出版直後に祖谷の神社へ奉納してから、なこちでの出版記念トークイベントに始まり、高松の北浜ギャラリーでの個展、徳島ではuta no taneでの個展に加えnagaya projectでのトークイベント、池田のマチトソラ芸術祭での展示とライブイベント、三好百年蔵自然の暦マーケットでのスライドプロジェクション、広島READAN DEATでの展示と中四国中心に、色々な場所で祖谷の話をさせて頂きました。11月28,29には松山ブックマルシェでもお話させて頂きます。プリントもこの間にどんどん進化し、土佐和紙プロダクツのものに加えオランダから高知梼原に移住し『かみこや』という工房と民宿を営むロギールさんの和紙とコラボするに至っています。

91011

そして東京、世界へ

今年最後の展示として、12月1日から19日まで、東京築地に新しく出来たギャラリー「ふげん社」にて写真展をさせて頂きます。

5日には一箱古本市の発案者として有名な南陀楼綾繁さんとサウダージ・ブックスの浅野さんとトーク、スライドに合わせてK.U.R.O.による電子音楽ライブも。その写真展に付随して4日は東京造形大でリトルプレスに焦点を絞ったトークイベントに出演します。僕は地方で写真を撮り続けるということについて喋ろうと思っています。
http://photograph.zokei.ac.jp/event/4819.html

6日には下北沢にある本屋B&Bにてケトルなどで活躍するライターの神田桂一さんのご縁でお話させて頂きます。こちらはもっと突っ込んだ話もできそうです。
http://bookandbeer.com/event/2015120601_bt/

そして来年、年明けから台湾での個展が決定しています。祖谷は台湾人の観光客も多く、関心が高い。向こうでもっとディープな祖谷の話が出来たらなと思っています。海外に行くのは実質7年振り!その先にはヨーロッパのフォトフェス参加の話もちらほら・・・楽しみでなりません。

四国大陸という宇宙

様々な縁が繋がり、一冊の写真集がここまで四国を繋ぐダイナミックなうねりを産み出せていることに驚き、そして感謝しています。放浪を重ねるともうどこでも同じだなという心境に至るもの。そこでやはり自分を産み育ててくれた四国だけは、僕の中でずっと特別な場所でした。今は限りなくローカルに繋がることが、きっと世界に繋がるのだと確信しています。この大陸は本当に美しい、水平方向から垂直方向の旅へ。

まだまだ、撮りたい場所があります。

12


Comments are closed.